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慶應義塾大学大学院教授/ 相磯秀夫 高村眞司 /NTTソフトウェア株式会社代表取締役社長 「ネットワーク社会における未来型人材」 |
問題発見・解決型の人材 高村● 本日のテーマは、未来に向けた人材ということです。私どもは、「人の頭脳から生み出される価値を販売する」のが仕事ですので、優れた人材があってはじめて成り立ちます。それで、今後のネットワーク社会に求められる人材とはどういったものか、まず先生にお話しを伺いたいと思います。私自身が感じているところでは、まず、総合力を持った人、部分的に分かる人ではなく総合的に見渡せるエンジニアというのが、思い浮かびます。
相磯■ 総合力というのは色々な見方があると思います。一つは、これからの時代は技術だけではうまく行かないという見方からの総合力です。それこそ技術と社会との接点に立って技術を見直す、ということではないでしょうか。そういう意味で様々な学問はもとより、専門分野を横断的にとらえていることが大切ではないでしょうか。
高村● しかし、なかなかこういった人が育たない。育ってこないのも現状なのです。
高村● 先般、とある国際会議で米国から出席していたある人に、「おたくの会社には教育担当という肩書の人がいるようだが、これは何をする人だ」と質問されました。日本の場合は、企業に入ってから色付けするものなのだと説明すると、「なんですぐ役に立つ人をいれないのだ」と。日本にはそういう人材を輩出する仕組みがないように思うのですが。
相磯■ 最先端研究のありかたが日米の大学ではだいぶ違うことに関係がありますね。良い研究をするというのは結局、良い教育につながっているわけです。今までの日本の大学は、一研究室単位で研究する。もちろんそれも重要ですが、そういう時代ではないと思います。米国の最先端はもっとスケールが大きい。色々な関係分野を横断的に研究するので一人ではできない。だからみんなで、大学や企業という枠組みや学問分野、専門領域を越えてコラボレーションする中で、社会により近い役に立つ人材が生みだされています。
高村● 確かに、米国ではカレッジなどで、実戦さながらの勉強をする。産学共同といってもビジネススタンスがしっかりした中で展開されています。
相磯■ それに大学というのは高校の延長ではない。企業も大学の延長ではない。教育で重要なのは若い人に驚きを与えて、その中から知る喜びを体験させることが大切です。そこから、自分で問題を発見し、自分で解決する手法を自然に身に付けることです。また入学試験から始まって、カリキュラム教育の方法、教材、データベース、それからキャンパスの運用に至るまで、非常に幅の広い環境の中で個性、独創性、国際性を育むような、きちっとした教育研究環境を学生に提供することです。
求められるのは真のベンチャー
相磯■ 自ら生みだすというベンチャー精神が不足しているからでしょうね。実は、コラボレーションを通して、ベンチャービジネス=起業家の精神が養えるのです。 私どものキャンパスなどは、ベンチャービジネスをやっている学生がかなりいます。ソフトウェアを中心とした情報技術というのは、非常に進歩が激しい。ところが最近は大きな企業からユニークで使いやすいシステムや技術がほとんど生まれていません。すべて、発祥の地はベンチャービジネスです。これは素晴らしいことです。米国はベンチャービジネスの質が非常に高い。逆にいうと、今の日本のベンチャービジネスの質は今一歩で、輸入会社という感じのところが多いようです。これではやはり日本の情報技術は伸びないと思います。
高村● そのためには、日本のソフトウェア開発ビジネスも、分業化を進めていくことが大切ですね。他社との関係の中に独自性が際立ってくるはずです。また、他社が作った既存のシステムを2次活用していく姿勢も大切です。何もかも自社で、ひとつひとつをゼロから作るのではなく、世の中にあるものを活用していくことが重要だと思います。
求められる料理人型プロデューサ
相磯■ その通りですね。現在、ソフトウェアの基本的な概念や技術というのは残念ながらアメリカのベンチャーに主導権をにぎられています。その点を悲観視をする人がいますが、日本は非常にアプリケーションに強い。これからはアプリケーションの時代ですから私はそんなに心配はしていません。ただそのような中で、インセンティブな開発ができるようにマネージメントをしてくれる人が必要であり、そのような人材の育成が非常に大切です。それと、今までソフトウェアというのは情報のプロが使うためにつくるというケースが多かったが、これからは身の回りの家電のようなソフトウェアでも言うか、一般市民生活に密着したソフトウェアの開発が鍵だと思います。誰もが情報処理ができ、好きな情報を入手できるような、いわばソフトウェアのASIC(ApplicationSpecificIntegrated Circuit)の開発です。Informationon Demandという概念は非常に重要なことで、これからの社会の至る所にそういう要求が登場するのではないでしょうか。
高村● 今後は本格的に情報を活用する時代になると思っています。ある人が、こういう情報が欲しい、こういう形で欲しいと思ったときに、きれいに用意して店に並べることができる。そんなソフトウェア開発が求められてくるはずです。そのときの開発者というのは、技術者というより、腕のよい情報の料理人といった感覚を持った人たちなのではないでしょうか。
相磯■ 情報の料理人。(笑)そうですね、ワークステーションとかPCを見て分かるように、現在の情報処理は間違いなく分散の方向へ向かっています。しかし今後、意思決定とか、ビジネスの兆候を探るということにウェイトが置かれてくると、逆に情報の集中が起こってくると思います。そこに新しい技術が求められてくるわけで、そこでは生の大量のデータを、まさに料理することになります。
高村● そうすると、どう料理するか、料理人の腕が問題になってくる。
相磯■そうです。まず生の情報をそのまま鍋のなかにいれる。鍋にあたるのがデータウェアハウス(データの倉庫)で、その中から宝物を発掘する。つまりデータマイニング(探鉱)というような感覚が重視されます。そんな見通しの中で求められるのは、おっしゃられたように、情報の料理人、すなわちビジネスプロデューサです。日本にはディレクタといった研究所長のような人はかなりいます。しかし、新しい料理をクリエイトするプロデューサが欠けています。プロデューサとはどんな人かというと、科学技術の流れをつかみつつ、21世紀の社会のビジョンを描ける人ということになります。そのビジョンを実現するために何をしたらいいか、ということをきちっと捉えることができる人でもありますね。また、リーダシップと実行力も期待されます。もちろんそれはいいことばかりだけではなく、それに伴って起きる社会問題をも解決していこうという人が望まれるわけです。
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