知情意の本棚SO-
→
 
森羅万象の案内役ならこの人。最強の科学ガイドと知ることの旅に出よう。
『宇宙・地球・生命・脳』◎立花隆◎朝日新聞社◎2200円+税

『宇宙・地球・生命・脳』立花隆氏は主知主義者を自認している。目的とか結果のために知るのではなく、知ること自体が面白いから知るということである。知的興味そのものが主役なのだ。前著『100億年の旅』も知的スリルそのものだったが、今回も実に刺激的で面白い。「ああそうなのか」「ここまで来ているんだ」という驚きに満ちているのである。評者はプレートテクトニクス理論を知っていたが、4億年周期で超大陸が生まれては分裂していることは知らなかった。パンゲア以前にもヌーナ、ロディニア、ゴンドワナという超大陸があって、現在のポスト・パンゲアとも言うべき分裂期も、後2億5千万年ほどすると、アジア中心の超大陸が誕生するのだという。イクチオンという誘導物質によって心臓だけの蛙、頭部だけの蛙をすでに作りだしていることにも驚いた。哲学は驚くことから始まるという。あなたも本書で大いに驚いて欲しい。驚きが意外な回路を作りだして、あなたの仕事を刺激するだろうから。
 

大昔、この国では、岩も草も風もよく言葉を話す神々だった。
『日本の神々』◎谷川健一◎岩波新書◎660円+税

『日本の神々』現在日本の古代民俗を著者ほど見事に語りうる人はいないだろう。民俗学を「神と人間と自然の交渉の学」と定義する著者は、神が人格神化されてしまう以前の日本の神々(それは動物をも含めた自然そのもの)のありようを、その深くて広い知識によって縦横無尽に語る。万物がアニマ(霊魂)であった時代の思考とは、まさに我々がようやく目覚めたエコロジー思想そのものなのである。自然を対立的にとらえて征服しようとする西洋の開発型アプローチが破綻を見せた今日、もう一度私たち日本人のDNAの中に眠っているもの・・・日本の神々・・・を憶い出すだけでも十分に有意義である。隠されていた歴史のベールが丹念に剥されていくような興奮を覚える本である。産土とは広辞苑によれば「ウブ(産)スとナ(土・地)が結合したもの」とあるが、本書では波打ち際の産小屋で子供を生む際、本当に下に砂を敷き、それをウブスナと呼んだという興味深い話を紹介している。
 

複雑な世界経済を理解するには単純な仮説モデルが有効だ。
『グローバル経済を動かす愚かな人々』◎ポール・クルーグマン◎早川書房◎1800円+税

『グローバル経済を動かす愚かな人々』「ある人が西暦零年に1マルク預金し、年5%の複利で計算すると、現在彼は太陽と同じ大きさの金塊を4個所有する。それに反して彼が零年から働き続けたとする。その報酬は1.5メートルの金の延べ棒に過ぎない。」とは作家ミヒャエル・エンデの言葉だが、実に巧みな比喩である。経済の本質はほとんどこの比喩で言い尽くせているような気もする。アメリカの人気エコノミスト、クルーグマンもまた比喩の名手である。彼に言わせれば、「実世界の複雑さを把握するのに、単純化されたモデルがいかに有効か」ということである。「ソーセージとパン生産社会モデル」「優しい漁師社会と厳しい金鉱探し社会モデル」「ベビーシッター協力組合モデル」など、単純でありながら本質を突いた比喩を読者に提示しつつ、グローバル経済の本質を解き明かして見せる。例えば「ソーセージ」が「製造業」、「パン」が「サービス業」だったらどうなる?と言ったようなことだ。どうです?ちょっと読んでみたくなりませんか。
 

文/松永 象
← BACKNEXT → ←←→→↑ TOP
Copyright(c)1995-1999, NTT Software Corporation

Return to TOP PAGE NTT SOFT