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![]() 理化学研究所のゲノム科学総合研究センターは、1998年10月に発足されたそうですが、まず「ゲノム」とは何か、というところから簡単にご説明いただけますか。 和田■ゲノムとは、生物個体の基本設計書であり、細胞の中にある遺伝情報の総体です。そこには遺伝子そのものと、遺伝子の発現を制御する情報などが含まれています。ヒトならヒト、その生物種固有のゲノムは、細胞の1個1個の中に入っており、あらゆる生命活動は、この基本設計書に基づいた分子間の相互作用によって行われているのです。 鶴保●すると、生物のゲノムはコンピュータのOSのような役割を果たすものと考えてよいのでしょうか。 和田■その通りです。ただし、それを生物OSと呼びますと、コンピュータと大きく異なるのは、外部から得た情報を生物OSで処理した結果、同じ生物種であっても、生体の中で個体ごとに差が生じて成長していく点です。生物の運命はゲノムだけで決まるのではなく、後天的に獲得された性質にも左右されます。とりわけ、ヒトは外部からの環境情報をたくさん取り入れ、それの影響を受け、また学習機能にも優れていますから、後天的には大きな差が出るのは当然です。それだけに、かえって先天性を支配するゲノムの研究が、非常に大きな意味を持ってくるわけです。 鶴保●ゲノム科学とは、具体的にどういった研究を行うのですか。 和田■ゲノムが基本設計書だとしたら、その台紙に相当するものがDNAの主鎖、文字にあたるものがA(アデニン)、T(チミン)、G(グアニン)、C(シトシン)という4種類の分子(塩基)です。生体を構成するタンパク質の分子や生体内の化学反応を触媒する働きのある酵素は、約20種類のアミノ酸が固有の順序で1次元的に結合したもので、このアミノ酸の配列を指定するものが遺伝子です。そして、遺伝子文章の文字であるA、T、G、Cという4種の塩基が、3個で1組の順列を形作ることによって、1つのアミノ酸を指定しています。すなわち、生物の体内には数千?十万種類のタンパク質が存在していますが、そのアミノ酸配列は、たった4種類の塩基の1次元配列によって決定されているわけです。こうした遺伝子の塩基配列のデータベースを整備し、タンパク質の構造と機能を合わせた系統的な研究を行うことによって、これまでのアプローチでは困難だった生物学的・医学的な問題の解決につながることが期待されています。 鶴保●ゲノムには、何の役割を果たしているのかよくわからない部分がたくさんあるそうですね。
和田■そうです。ゲノムには、遺伝子群とその制御信号群の他に、多くの未知の領域があり、そこに遺伝子間の相互作用の制御を司っている部分が隠されているのではないかと言われています。その未知の領域を含めて、すべてのゲノムの塩基配列を読み取って決定し、「遺伝子エンサイクロペディア(遺伝子の百科事典)」を作成するプロジェクトが、我々のセンターで実施されています。ヒトの遺伝子群は、すべて合わせてもゲノムの5%に過ぎませんが、それでも、10万種類もの遺伝子があります。ゲノムの中のこの遺伝子部分だけを切り出したものをcDNAといい、遺伝子情報の集約という意味で、まとまった研究対象となるわけです。 |
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