知情意の本棚SO-
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ますます接近する生物学と経済学の世界。もはや単なるアナロジーではない。
『ニューエコノミー 勝者の条件』◎ケビン・ケリー◎ダイヤモンド社◎1600円+税

『ニューエコノミー 勝者の条件』前々号でご紹介した『複雑系を超えて』の著者、ケビン・ケリーの新著である。著者得意の生命科学、生物学のアナロジーから経済を見る手法は今回も冴えている。「テクノロジー・システムが生物学的増殖をする例は、日常茶飯事になった。これはネット・エコノミーの一つの特徴だ。テクノロジーが生物学を模すようになったのだ。そしてこれこそ、なぜテクノロジーがすべてを変えていくかの理由なのだ」が本書の核心である。時代の変化のありようをフラックス(flux)というキーワードで解説している。fluxとは変動、流動、流転と言った意味であり、潮の変わり目などをいう。目的、方向性が見えないまま変化することであり、非常に不安定な変化である。秩序とカオスの狭間に変化ありだ。「無料で売れ!」「ネットを肥やせ」「プレースからスペースへ」「フラックスこそ常態」「関係性のテクノロジー」「効率と生産性を捨てよ」などの刺激的なコンテンツが満載である。
 

「誰かが無理に1マイルの道を歩かせようとするなら、一緒に2マイル歩きなさい」
『イエスの広告術』◎ブルース・バートン◎有斐閣◎1390円+税

『イエスの広告術』本書は1924年にアメリカの広告代理店BBDOの会長で、屈指のコピーライターでもあったブルース・バートンによって書かれた。当時100万部のベストセラーになったという。史上最高のコミュニケーター、キリストの天性の知恵とノウハウを簡潔に伝えている。宗教者をアドマンの視点から見たところが本書の面白さで、キリストのコミュニケーション術の秘密はすべてを「たとえ話」で伝えたところにあり、またそのコツは「圧縮」「単純」「誠実」「繰り返し」にあるという。人間と人間のコミュニケーションはすべて心理学であるが、その意味で言えばキリストは天性の心理学者であったということである。またキリストに学ぶビジネス成功哲学としては「成功したいと思うものほど、人に仕えねばならない」「トップの座につきたいと思うなら、一番下で尽くさねばならない」「大きな報酬は要求される以上のものを提供するものに与えられる」の三つを上げている。
 

これはバーチャルゲームではない。迫真の文体で綴る巨艦の戦闘と敗北。
『戦艦大和ノ最期』◎吉田 満◎講談社文芸文庫◎940円+税

『戦艦大和ノ最期』「総員集合 戦闘略装ノママ総員上甲板ニ整列 管制下ノ暗夜、鎮マル三千名ノ呼気」。最期の出動命令を待つ乗員の緊迫と覚悟が目に見えるようである。戦後も五十余年となり、はるか忘却のかなたに消えようとしていた第二次世界大戦の記憶が、突如この『戦艦大和ノ最期』の静かなブームによって甦りつつある。昭和二十年四月、片道分の重油を積んで出撃した戦艦大和の戦闘、沈没、漂流、帰還までを、大和に乗り込んでいた若干二十一歳の副電測士が、烈々たる文語体で叙述する。なぜ文語体かは著者吉田満氏があとがきで「第一行を書き下した時、おのずからすでにそれは文語体であった」「“戦い”というものの持つリズムが、この文体の格調を要求する」と述べている。評者はもちろん戦争体験世代ではないが、本書には深く深く胸を打たれた。戦後の日本文化の礎がこのようなものの上にあったことを知っておくことは決して無駄ではない。若い人にお薦めしたい。
 

文/松永 象
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