「課題発見」
積極的なネットワーク活用によりビジネス領域を拡大。



●ネットワークの活用で新業態を拓く

コンピュータによるネットワーク化が盛んになっていますが、本当のコミュニケーションというのは、やはり人と人とが向かい合って話すのに越したことはないと思います。現在のような教室で行う英語教室は将来的にもなくなることは決してないでしょう。ただし、新技術に触発された新しい方法も生まれてくる可能性があります。我が社としても将来を見据えての準備は大切と考え、その結果として出てきたのが「イーオン・バーチャル・スクール」です。

6万人を越えるイーオンの生徒さんの中には、特殊な英語--例えば、学会発表のための英語、ホテル関連の英語、病院で看護婦さんやお医者さんが使う英語など--を学びたいという方もいらっしゃいます。今までですと、生徒さんが全国に散在されているために、このような要求にはなかなか応えられませんでした。ところが、時間や場所の制限を受けないネットワークのおかげで、たった一人の生徒さんが持つ特殊なニーズにもお応えできるのではないか、そんな可能性を感じるのです。その土地ではたった一人でも、全国には同じような希望をもった方が他にもおられるはずだからです。また、体の不自由な方だとか高齢の方--こういった方たちは学校に通われるのが物理的に難しい場合も多いのですが--にも手軽に英語を学んでいただけるようになるのは、やはりネットワークのおかげではないでしょうか。時間の制約の多いサラリーマンの方も好きなときに好きなところで学習することができるようになるのです。

●労働集約型からの脱却

生徒さんが増えると教師の数も増えます。ネットワークを使うことによって、労働集約的なところを少し改善できれば、授業料も安くなってより多くの方に学校を利用していただけるのではないか。また、インターネットの公用語はやはり英語ですから、今またひとつのムードが高まっているときではないかと思います。今まで英語に触れることの少なかった方たちも、英語に親しむ機会が増えてきているのではないかと思うのです。また、デジタル化された情報は保存が容易ですから、これも将来的には何か使えるのではないかと考えています。生徒さんの質問にしても、口頭だとその場で消えてしまう。各校では同じような質問がたくさん出されていることでしょう。質問に対する答えを保存し、それを後の利用のために残すのは、人間よりもコンピューターの方がずっと得意です。その能力を利用しない手はないと思っています。



●発信型英語教育の必要性

インターネットには、これがなかったら知り得なかったような人や情報にアクセスできるという大きな利点があります。さらに英語教育という観点からは、情報を得るということとともに情報を発信できるということにも価値を見いだしたいのです。ことさらに構えなくてもメールの発信ができることは素晴らしいことです。今までの英語の教科書は、ある程度のレベルになってはじめてディスカッションやディベートが出てくる。初心者のうちは挨拶や事実の記述に終始している。本当はどのレベルの人も自分の意見は言うべきだと思います。レベルに応じて自分の考えが伝えられなくては、これからの世の中ダメだと思います。発信型の英語というものが重要になってくるわけです。
現在は「バーチャル・スクール」はニフティ・サーブだけですが、インターネットでも4月頃から実験に入って、夏前には立ち上げたいと思っています。インターネットという新しいメディアがつくり出す可能性に大いに期待する今日この頃です。

株式会社イーオン語学教育研究所
取締役 広報担当部長
川島 光子


●新メディアに敏感な社内風土があった

アルクは日本人の国際的なコミュニケーション能力を高めることを目的に、出版という枠組みから様々な取り組みをしてきました。ですから、インターネットの登場によりコミュニケーションの新しい枠組みが広がってきたということに、早い段階から関心をもっていました。従来より、ヒアリングマラソンなどをはじめとした、誌面とカセットテープをドッキングすることによって、より有効な教材を開発することをめざしてきたものですから、会社の体質として、既存のメディアにとらわれず積極的に新しいものを取り入れる風土がありました。またこれまで蓄積してきた音声、テキスト、画像などのデータを活かすことができるという点からも、インターネットには注目をしていたわけです。

日本人は昔から英語に関心がある英語好きの国民ですけれども、実際に生の英語に触れる機会はそれほど多くはありませんでした。海外旅行に行けば、もちろん英語に触れますけれども、普段はアメリカのニュース週刊誌などの雑誌を読むくらいで、実際にはそれほど本物の英語に触れる機会はなかったと思います。しかしインターネット(特にWWWなど)で、生の英語情報を簡単に引っぱり出せるようになったことは、国際的なコミュニケーション能力を高める上でも非常にいい機会だと思います。

●オンラインでの通信教育に未来を確信

インターネットの利用ということについていえば、「生の英語を教材にする方法」はないかということと、「ネットワークで英語の授業」ができないかということ。この二つを真っ先に考えました。そこで、「インターネット・マラソン」というものを一昨年に出しました。インターネット上にある英語素材を教材にして、英語の勉強をすると同時に、インターネットの勉強にもなる。さらにこちら側からのアドバイスもインターネット上で流して、学習の機会と能率を高めようというものです。オンラインでの教育の可能性。このことを確信できたのが「インターネット・マラソン」への取り組みでした。



●今後の課題は走りながら考える

課題もあります。オンラインのマーケットがまだ熟していないためにビジネスとしてみると、まだまだこれからの分野といわざるを得ません。例えば、わが社の「ヒアリング・マラソン」が大きく売れた理由というのは、やはりウォークマンのおかげだと思っています。通勤電車で勉強できるという点が、時間が惜しい人にとってはよかったのでしょう。英語の学習の場合に時間の問題はポイントになります。ですから、たとえ単にインフラが整っても、家庭のネットワークを英語学習に利用する人はそれほど増えないかもしれません。また、マルチメディアに適した情報発信も考えなければなりません。

もちろん楽しいに越したことはないのですが、わが社のテキストを購入してくださる方は学習が主目的ですから、インフォメーションの部分が、きっちりと押さられえていることが第一です。ただ、近年、幼児期から英語をという機運が出て来ていますように、幼児に英語を教える場合にはエンターテインメントの要素をむしろ主にしないといけないのかもしれません。課題をあげればきりがないのですが、走りながら考えるのが私たちの信条です。新しいことは積極的に取り入れる。その先にまた新しい未来が開けてくるような気がします。

株式会社アルク 取締役
英語編集局長
王身代 晴樹