「カリフォルニア・レポート」
買収・提携。再編が進むInterspaceのコンペティター


シリコンバレーでは、毎日のようにインターネットやマルチメディアの新技術の発表やベンチャーの出現、企業間の提携、買収といった動きが、Newswireやベンチャーキャピタルが編集するインターネットニュースで報道されています。また関連する企業やコンサルタント、ベンチャー・キャピタリストが集まるような会合では、様々な憶測が飛び交います。今回は、浮き沈みの激しいシリコンバレーで繰り広げられる提携や買収などの再編劇に、「SO-」第1号、2号で紹介したInterSpaceのコンペティター達がどのように翻弄されているかを話題として取り上げます。

1997年4月15日Palo Alto某ホテル。某ベンチャ・キャピタル主催のパーティ会場で、交わされた会話。

「NTTソフトさんは、こちらで何をされているのですか?」「バーチャル・リアリティの技術を使って3次元で広場や建物をネットワーク上に作り、そこでオンラインショッピングや教育、娯楽などのサービスを提供するソフトを作っています。」「そういえばWorldsという会社をご存じですか。そこに投資をしたのですが、最近どうも事業がうまく行かなくなってきて困っているんですよ。社長始め幹部が抜けちゃってね。」テキストチャットを使った多人数参加型3次元通信環境の開発者で先鞭をつけ、我々が最も強敵と考えていたWorlds社の事業がおかしくなっていて倒産するかもしれないという話を耳にしたのは、こんな会話からでした。

数日後、InterActive Week誌(もちろんWebのホームページ)が、DataStreamというベンチャ企業とニューヨークの投資家がWorlds社を2,500万ドルで買収したというニュースを報じた。Worlds社は、IBMなどからの資金投入によって最盛期には140人の社員をかかえ、1億ドルの価値が付いていたという。またビジネス面でも、VisaやMGM、日本でも何社かがWorldsの3D環境を使ってオンラインサービス事業の展開を企画、試行中であったが、将来のサポート体制など不安が出てきたため、最近では、どこの技術に乗り換えるかが焦点となってきている。

また同じ4月15日には、この半年間で、3Dの世界ではめきめき頭角を現してきたドイツに基盤を持ち、サンフランシスコを本社とするBlack Sun Interactive社(テキストチャットを使った多人数参加の3D通信環境を開発)が、S3社(3Dアクセラレータボードベンダー)、Intervista Software社(3Dブラウザ)と技術提携したというニュースが流れた。(最近の噂では、Black Sun Interactive社は、業績不振のためサンフランシスコを撤退したという)

4月22日、Newswireは、ガリー・カスパロフ氏(5月にIBMのディープ・ブルーと対戦し、世界中を沸かせたチェスのグランドマスター)らロシア人科学者によって設立されたParaGraph社(テキストチャットを使った多人数参加の3D通信環境を開発)がマイクロソフトと共同でMSN上にMagic Resortと呼ぶ3次元を使ったネットワークサービスを開発すると報じた。いよいよマイクロソフトも3次元ビジネスに本格的に参入するとの憶測を呼ぶ。(マイクロソフトと技術提携したところは、最初は共存共栄できるが、1年から2年経ったところで捨てられるというのが、シリコンバレーの定説。ウエッブのブラウザでNetscapeの2番手にいたSpygrass社は、マイクロソフトのインターネットエクスプローラー(IE)へ技術開示をしたが、これが後にロイヤリティ問題に発展しただけでなく、今やマイクロソフトはIE4.0は、独自技術と言ってSpaygrass社へのロイヤリティ支払いを拒絶しているという。)

5月22日(これは確認が必要)には、シリコングラフィックスが3DソフトウェアのParaGraph社を買収し、新たにシリコングラフィックス社なにのウエッブ事業部と合わせて300人からなるCosmo Software社を設立したと報じた。シリコングラフィックスは、3次元グラフィックスではその開発ツール、エンジンなどで業界の中心的存在であるが、ウエッブの第二世代は、3次元と早くから宣言してきたものの通信と融合させた環境作りでは、他社に遅れていたためにParaGraphを買収することでハードウェア(グラフィックスワークステーション)から、マルチユーザ通信環境、開発ツール(ParaGraph提供)、ブラウザ(シリコングラフィックス社CosmoPlayer)までラインナップさせて一気にマーケットを席巻しようとの戦略に出たものと予想される。

この再編劇は、高速アクセスの普及などインフラ整備に関する問題や仕様の定まらないVRMLに振り回され続けていることなどがベースにあって、ウェブ3D市場が予想どおりの速度で成長しなかったことに帰因しています。そのため結果的には、17百万ドルという潤沢な投資をWorldsは食いつぶしてしまったし、ParaGraph社はマイクロソフトとの危険な提携やシリコングラフィックスからの買収に応じざるを得なかったというのが、本音のところでしょう。

音声チャットのOnLiveはどうしたかって?彼らも最近の情報では、3Dはひと休みのようです。何しろマイクロソフトのNetMeeting用に彼らのデジタル音声ミキサー技術をライセンシングしたとのことで、そのための稼働に追われているとか…。
インターネット版InterSpaceのβテストバージョンは、この1ヶ月で300人以上が、ソフトをダウンロードし、おしゃべりやタワーレコード、水族館などのアプリケーションをお試しいただいております。他社が一服している間にビジネス面でも水をあけたいと頑張っています。

NTTソフトウェア
カリフォルニア支店長 西村 孝