マルチメディア時代の品質管理
ソフトウェア開発の品質管理は、ハードウェアの開発方法をお手本として発展してきました。ソフトウェアの作り方を作業工程に分け、工程ごとの詳細な作業手順や生産物、進捗管理や報告の方法などを規定するとともに、QC活動により、作業の進め方を工夫して改善してきました。これにより、開発チームや個人ごとの作業のばらつきがなくなり、職人的な生産形態から工業的な生産方式へ発展をとげたわけです。

しかしながら、最近のマルチメディアやインターネットの発展に伴い、ソフトウェアの開発形態も大きく変わりつつあります。 ハードウェアやネットワークの進歩により、画像や音声などが自由に使えるようになり、システムに対するユーザの要求はますます多様化、高度化しています。また、技術の進歩や社会の変化が早いため、従来のように1年や2年かけてシステムを開発していたのでは、できあがった時に、システムが陳腐化する危険性があり、ユーザの実現要求が短期化してきています。このため、従来のように仕様を完全に規定してから設計を順次詳細化していく、いわゆるウォータフォールモデルの開発形態ではなく、直接、画面プログラムを作成し、お客に提示しながら仕様を見直していくプロトタイピング方式やスパイラル方式の開発が一般的にならざるを得ません。また、WWWを用いるシステムのように、プログラムだけではなくコンテンツも重要な開発対象となってくるため、仕様そのものも詳細に規定することが困難になってきます。

このように、マルチメディア時代のソフトの開発においては、個人の技術や判断力に依存する部分が大きくなっていきます。従来のようなプロセス管理に基づき、組織としてのソフトウェア開発能力向上を重視する品質管理は開発のスピードが遅くなり、競争力の低下を招く危険性があります。しかしながら、個人やサブグループのリーダにまかせきりの管理をしていたのでは、また一昔前の職人芸の時代にもどることになってしまいます。この問題を解決するためには個人の技術力のアップに加え、イントラネットによる技術ノウハウの共有やプロジェクト管理ツールやグループウェアの活用を図る必要があります。これらの情報共有のシステム化により、進捗や問題点を全員が把握し、的確な判断が迅速にできるとともに、プロジェクトのリーダはプロジェクトの状況や問題点の有無をリアルタイムに判断することが可能になり、個人の能力を尊重した上で、管理を行うことが可能になっていくと考えられます。

いずれにしても、マルチメディア時代のソフト開発競争で生き残りを図るためには、品質と開発速度の両立という困難な課題の解決を目指し、種々の施策についてチャレンジを継続することが必要でしょう。

NTTソフトウェア研究所
研究企画部長
安原 隆一