「課題発見」
 厳しい品質管理方式と社員の自助努力で、
 21世紀に向けた業容拡大を図る。

 富士ソフトABC株式会社


●移りゆく事業内容

わが社の業務内容は、ソフト開発事業が全体の約7割、コンビニエンスソフト・ショップ事業(エンドユーザに対する機器販売、システムサポート、システム構築といった事業)が2割強を占めています。残りが、最近力を入れておりますネットワーク事業、コンテンツ事業などです。これらは、まだ10%にも満たない状況です。しかし、将来的にはこの事業を積極的に育てていきたいと考えています。わが社は、元来メーカさんのマイコン組み込み型ソフトを開発するのが主体だったのですが、バブル崩壊後はメーカさんからの発注が減りました。そこで、現在はソリューション型のビジネスやネットワーク、コンテンツ型のビジネスに転換してきております。

今後の課題は、やはり、優れた人材の確保、養成です。それから、将来的展望といたしましては、「2501」という中期計画と基本理念があります。これは、2000年までに売り上げを500億円にし、1部上場に移行しようというものです。

●「品質・納期・機密保持」とISO取得

先程もお話ししましたように、わが社は従来からメーカさんのマイコン埋め込み型のソフト開発が多い。例えば複写機ですと、3つ4つ結構大きいマイコンが入っています。これが何十万台という規模で製品として出ていくわけです。ですから、私どもといたしましては、一般のソフトとは違いまして、品質を非常に厳しく要求されていたことになります。 一般のソフト開発の感覚では、バグが出たら直せばいいじゃないか、というところです。しかし、私どものような開発で1つバグを出すと、メーカに大変な被害を与えてしまいます。そのため、私どもは、従来から独自のプロジェクト管理方式、技術管理方式を採っておりました。

私どもとしては、開発側から品質保証書というものが出せないのかと、以前から考えていました。ソフトウェアは安易に製品として流れてしまう。そこをなんとかして品質保証書を出せる体制を作りたいし、社内にそういう意識を植え付けるのが大事だと考えていました。わが社では「ひのき」すなわち「品質・納期・機密保持」という理念を掲げています。「ひのき」が確保されれば、自然にコストは付いてくるという考え方です。

お客様に迷惑をかけない高い品質の物を出したい。それを形にした品質保証書をわが社でも出せないだろうかという思いが強かったのです。ハードでも完璧という物はありえません。たとえば、冷蔵庫でも何でも、絶対に壊れないという物はありません。ただし、どれくらいなら許されるのか、その限界値があります。まずはその限界値をしっかりと確保して、品質管理をしようという訳です。ソフトのバグにも許されるバグと許せないバグがあって、その許せないところの範囲を明確にして品質保証をしなければなりません。

バブル崩壊後は、社内ムードを引き締める意味もありまして、ISO取得に乗り出しました。当初は審査本部がロンドンで、英文でのやりとりを覚悟しました。 途中から日本にも審査機構ができ、ソフト関係では日本では3番目に取得しました。私どもが比較的早くISOを取れたというのは、こういう管理体制がしっかりとしていたからだと思います。

ISOを取った後、確実にお客様の信頼度が上がりました。独立系列のソフト会社として、一括請負で管理体系もしっかりとしているとの評価を受けています。

●社内教育上の大きなメリット

私どものカレンダーに必ずサービス向上月間とか、品質向上月間という言葉が入っています。生産性向上や事故防止といった標語を事業所毎に募集して、その審査を他の事業所が行います。その中でも一番結果の良かった標語を全体の標語として採用します。たとえば今月の標語がサービス向上であれば、わが社の対応はどうでしたかなど、お客様にアンケートを取ったりします。こういう形で社内の意識を高めています。

ISO取得のひとつの大きなメリットは、社内教育にこの上ない好影響を与えたことです。以前はプロジェクト管理帳票類であるプロジェクトカルテを社員に作らせていたのですが、多くのプロジェクトリーダはそれを面倒くさがっていました。ところが今は、審査が入りますから、文句を言う者は誰一人としていません。こんなことは当たり前、こんな内容では審査に通らないぞ、という意識が各社員の頭の中にこびりついたのです。そしてプロジェクト管理が徹底されてきました。

●全社の取り組みを支える自助努力

以前は、幹部研修などの色々な研修をやっておりましたが、お金がかかるだけかかって、成果はそれほど上がらないものでした。そこで試験でも何でも、全部自己負担で受けさせる。その代わりに、役に立つ資格に対しては、会社から報奨金を出すことにしました。 「2501」ということを先ほど申しましたが、私どもには「3150」という数字もあります。これは、「毎年30%成長する、1割の利益を確保する、1株(50円)当たりの純利益を50円にする」という目標です。各事業所で3割成長というのは、大変なことです。ところが、各事業所はマーケットを融通し合ったり、技術を交換し合ったりして、いずれも3割を実現してくれています。

基本的にわが社は自助努力の会社でして、自主的にやらなければ何も身に付かない。つまり、教育しないのがわが社の教育なのです。ただし、泳げないのにいきなり海に入れる訳にはいきませんから、泳げる程度のことは教えます。後は、自助努力です。研修を受けるのは自分の判断でやりなさい、研修を受ける費用や時間は自分の努力でやりなさい、と厳しく言っています。ですから、例えば幕張で何かショーがあると、必要だと思った社員は皆、休みを取って見に行きます。

会社主催では、年に1回、テクニカルカンファレンスがあり、すべての技術系社員が参加します。昨年はセッションが24件。時代の流れなのか、私には分かりにくい物が多くなってきました。こういう発表にも力を入れています。このような社員が自助努力する風土があるからこそ、ISO取得などの品質管理への取り組みも、大きな力となっているのではないでしょうか。

富士ソフトABC株式会社
代表取締役社長
野澤 宏