課題発見

松下通信工業株式会社 パーソナルコミュニケーション事業部 静岡工場


「世界一の移動体通信工場を実現させるSPSとQ・C・Dの実践」

<松下通信工業の組織概要と活動指針>
松下通信工業は、1958年1月17日に、当時の松下電器から通信機器、音響機器、計測機器など産業用・業務用エレクトロニクス分野の事業を分離して設立した会社です。初代社長の松下幸之助は会社設立にあたって、次の3項目を経営の活動指針としました。
 (1)与えられた事業分野で社会に貢献すること。
 (2)世の中に受け入れられる商品を作り、自ら販売していくこと。
 (3)松下電器の研究開発部門の支援・協力を得ながら、松下グループの先達となること。

わたしどもの会社は独立した株式会社ですが、松下電器とは分社という関係になっています。また松下通信工業も、松下電器のように事業部制を採用しています。 松下通信工業は9つの事業部からなっていて、その中のひとつにパーソナルコミュニケーション事業部という組織があります。携帯電話、自動車電話、ポケットベル、PHS、家庭用電話機といった通信端末を生産・販売する事業部です。そして静岡工場はパーソナルコミュニケーション事業部を支える一工場となっています。

<静岡工場の位置づけ>
国内3カ所、海外3カ所にパーソナルコミュニケーション事業部の生産拠点がありますが、その中で静岡工場は、携帯電話、ポケットベル生産の専門工場という位置づけになっています。事業部の従業員は全体でおよそ1300人いますが、この中の約400名が静岡工場にいます。静岡工場は生産の専門工場ではありますが、ものづくり支援のための技術者が多いという点が特徴です。

静岡工場は1991年の10月に、「1994年に端末開放となる移動体通信端末の専門工場を造ろう」ということで操業を開始したわけです。つまり、それまで本社のある綱島地区事業場で行っていた移動体通信端末の生産を専門的に行う工場としてスタートしました。

静岡工場の特徴は、
・源泉から完成まで、工程別ブロック品質管理による、お客様に信頼される物づくりの実現
・人と機械の特徴を生かした、効率的でシンプルな生産システム(SPS)の実現
・フロン・重油の使用全廃をはじめとする各種対策により、緑豊かな地球環境にやさしい工場の創造といった点が挙げられ、創業以来NTTドコモ様に御支援、御指導頂いた結果先端技術商品開発に対応した、時代をリードする工場に成長することができました。

<量産というカルチャーへの挑戦 SPSの採用>
静岡工場を操業した当初、携帯電話の生産量は1993年の上半期でも月におよそ2万台でした。この数字が現在では月60万台となりますが、ピーク時は70万台生産したという経験があります。量産に変わってきたのはつい最近のことで、5年前までは研究・開発型の物づくりをしていたのです。つまり、我々は最近まで、研究・開発型の物づくりの時代が長かったので、なかなか「量産に向いたカルチャーへ変わらない」という課題がありました。

それで、1994年から移動体通信端末の生産は量産型のものづくりが必要と考えていましたので、1993年から、「今までの研究・開発型の物づくりから量産型の物づくりに切りかえる」ための体質改善活動をはじめました。
つまり、既成概念に捕らわれずに、創造し挑戦する物づくりをしていくことで、ロスの徹底排除による最大効率の追求をしていこうという活動です。具体的には作業者のロス排除、環境のロス排除、物流と情報のロス排除、設計起因のロス排除、機械・設備のロス排除、生産方式のロス排除を追求しています。

それが端的にあらわれているのが、たとえば部品点数の削減です。当初、移動体通信端末の部品点数はおよそ1000点近くありましたが、最近では約半分に削減することができました。もうひとつの例としては、社内テクノスクールを開講し、各資格取得者が増えるにつれて、工程品質と月産生産能力が上昇したことです。社内テクノスクールは、各資格取得のための社内講座としてスタートしましたが、この講座を受講する人数が増加するにつれて、1993年上半期で2万台だった月産台数が1995年上半期では10万台、1997年上半期では60万台に急上昇しました。

考え方のこのような変化が浸透することにより、段々とロスの徹底排除による効率化がなされてきたわけです。手作業から一部機械化をして、さらにできるところは完全な機械化をして、一台を生産するための時間がおよそ7秒、さらには3?4秒に短縮されるようになりました。機械化が進むと、これまで長時間かかっていた作業のスピードが上がり、なおかつ、機械は人間に比べバラツキが少ないので品質の良いものが生産できるのです

<Q・C・Dの責任を果たして世界一の移動体通信工場を目指す>
静岡工場が目指す姿は、「世界一の移動体通信工場」です。何としても世界一になりたい。そのためには、物づくりの基本である品質(Quality)、コスト(Cost)、納期(Delivery)の面から「良い商品を生み出す」(Q)、「難しいこと はしない」(C)、「決めた約束は必ず守る」(D)、という3点の責任を果たすよう努めています。

「良い商品を生み出す」というのは、他社と差別化した良い商品を作り続けていきさえすれば、必ず世の中で支持され、お客様にお買い上げいただけるということです。
「難しいことをしない」というのは次のようなことです。我々が実際に新しい商品を作っていく中で、「あ、これはハイテクだな、難しいな。」と思うようなことは実際に量産できません。どんな難しい技術を使ってもそれをブレイクダウンして、「ああ、なるほどね。それだったらできるね。」と皆が思う段階になって初めて量産が可能になります。それから「決めた約束は必ず守る。」というのは、ある意味では当然のことですが、NTT様はじめ、お客様と交わした約束は100%守っていくことが仕事をしていく上での原点だということです。

以上のようなSPSとQ・C・Dを実践していけば、事業部のプロフィットセンターである工場として、市場競争に勝ち続けられ、結果として世界一の移動体通信工場を実現させることができると考えています。

松下通信工業株式会社
パーソナルコミュニケーション事業部
静岡工場長 武田好正