昭和58年、厚生省は2015年までに65才以上のお年寄りが日本人の全人口4分の1になると発表しました。高齢化問題はもはやマイノリティではなく、マジョリティの問題であることを明らかにしたのです。20世紀最後のビジネスは環境とリゾートだと言われていましたが、この発表を受けて、もっと大きなビジネスは高齢者向けの医療福祉関係なんだと、ベンチャー企業から大企業までみんながヘルスケアビジネスに乗り出して来ました。
ところが、20世紀最後のビジネスチャンスということで多くの企業がこの分野に参入したにもかかわらず、実態は満足いく商品もサービスも提供できない有り様でした。一方その頃、進行性筋ジストロフィーという難病を患っていた私は、医療を受けるためではなく、生活情報を得るために4年ぶりに病院に行きました。そこで様々なことに気が付きました。
私が患者として感じたことですが、例えばヘルスケア産業に参入した多くの企業では、最終的に商品やサービスを必要としているお客様の声を聞いていないような気がしたのです。所々に、患者は弱者で、自分たちは介護してやっているんだという意識を感じざるを得ませんでした。その結果として顧客である私たち、つまり患者は、企業主導型の商品やサービスを甘受せざるを得なかったのです。このことは私にとって大きな発見であり、ビジネスチャンスに思えたのです。
こうしてその人の生活スタイルに合ったメニューをお見せして、清く暗く貧しい医療福祉ではなく、明るくさわやかな医療福祉をトレンディなビジネスとしてマーケティングしていけたらという想いで、ハンディネットワークインターナショナルをスタートしました。
正直なところハンディネットワークインターナショナルをスタートさせた時、賭けのような気持ちもありました。それまで営んでいた不動産業は好調でしたし、病気もかなり進行していました。今では首から下の運動機能がなくなってしまいましたが、なくした機能を代替してくれるチームをつくれば誰でも社会参加できるし、人間としての尊厳もあるはずだと考えました。だから私はこんな時代だからこそ「なくしたものは勘定するな。残っている機能を120パーセント活用しろ。甘ったれるな日本人」と敢えて言いたいです。
私は、ハンディネットワークインターナショナルが理念のある日本一の零細企業であり続けたらと思っています。このような闇の時代を生き残るためには社としての、そして個人としての理念を持つことが非常に重要です。まず自分の羅針盤を持ち、己のために働くことです。スタッフによく言うことですが、自分の幸せも考えられない人は自分の家族の幸せも考えられません。原点は自分の幸せと自分の家族のハッピー。だからいい仕事をしようと思いますし、子供たちにも自慢できるのです。その中で会社がある。会社は個人を守るものではなく、個人の幸せを運んでいる箱なのです。
春山 満(はるやま・みつる)
1954年 大阪府生まれ。24歳より進行性筋ジストロフィー症を発症。現在、首から下の運動機能を全廃。1985年に障害者や高齢者とその家族のための「障栄福祉情報センター」を設立。1988年に全国初の福祉デパート「ハンディ・コープ」を開業。1991年にオリジナル商品の開発・販売やコンサルティング業務を手掛けるハンディネットワークインターナショナル(HNI)を設立。1995年に株式会社ハンディネットワークインターナショナルと改称。著書に「どないしましょ、この寿命」(一世出版)、「生きる」(クレスト社)、「言い訳するな!」(講談社)がある。
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