「ひとの目 時の芽」
数字で読め日本経済


4月に入って気がついたことがある。それはあれだけ毎朝、新聞の第一面に登場していた金融証券業界の不祥事の記事がぱったり止まった。これで世間の気持ちが正常になって、景気も回復し始めるだろうというのが私の観測である。

今、日本は不況といわれるが、経済のファンダメンタルズは決して悪くない。この不況の原因は個人消費が冷えたからだというのが、やっと世間にわかってきたようだ。個人消費は290兆円で日本経済の6割である。これが冷えたら当然不況になる。統計を見ると個人貯蓄は1200兆円で金を十分持っている。それが出てこなくなったのは心理的なものである。

バブルがはじけて以来不況が続いているという意見があるが、これは数字から見ると明らかに間違いだ。96年には成長率3.6%で工業先進国中最高だった。これを引っ張ったのは製造業で最高の決算の数字を出したところが幾らでもあった。ところが不思議なことに新聞の経済欄にはその話が出ない。エコノミストが金融証券の話ばかりに目が向いていたからだ。

ここでいきなりこの話をするのには理由がある。今情報技術が進歩してどのような情報もすぐその場で手に入るようになったが、問題はそれをどのように読むかである。日本の経済は93年に底を打ち回復して96年が久しぶりに絶好調になっていたのは、どの数字を見ても明らかだった。ところが経済の専門家が取り上げなかったものだから皆が不況の連続だったと、今でも信じ込んでいる人が多い。

そこでぜひ読者に考えてもらいたいことがある。経営とは毎日が現実との戦いである。それには現場をよく見てその意味を正確に読むことである。幸い情報を集めたり送るための道具は殆ど全てそろっている。あとはこれをどのように使いこなすかだ。最近の経済の特徴は、同じ業界でも経営に圧倒的な差がついてきたことだ。自動車業界ではトヨタ、ホンダが良いし、家電ではソニー、松下が良い。これらの企業の情報装備に大差があるわけではない。問題は情報装備の使い方だ。今工作機械が売れている。昔から工作機械は景気の先行指標といわれた。ものを作るには設備がなければ出来ないからだ。この現象をどのように読むかを読者に考えてもらいたい。

5月に公表された日本企業の海外生産は47兆円に達した。韓国のGDPは39兆円だから凄まじい日本の製造業の実力である。このように見ていくと日本の経済の将来には少しも心配することはない。これらのことを読者自らデータベ -スから取り出してその意味を読んでもらいたいのだ。日本の経済の行く先は、マスコミの報道ではわからない。自分の頭で考え、目で確かめることである。

東海大学 教授 唐津 一