ライフスタイルの変化に対応し、顧客サービスを徹底する
株式会社ワーナー・マイカル 広告宣伝部部長   安道 肇


郊外型マルチプレックスシネマを全国に展開し、顧客サービスを徹底することで、衰退の一途をたどっていた映画興行界に新しい息吹を吹き込むワーナー・マイカル。同社が目指す映画館とはどのようなものなのか、広告宣伝部部長の安道肇氏にお話を伺いました。

現在急速に進行しているマルチメディア化のなかで、コンテンツとしての映画に対する期待は非常に大きく、多くの企業が興味をもち投資をしています。
ワーナーブラザーズをはじめハリウッドの米国映画メジャー各社は、コンテンツとしての映画の価値をより高めるために、世界中に設備のよい映画館を増やし、たくさんの観客を映画館に呼びたいと考えています。なぜなら「全米ナンバーワンヒット」とか「歴代興行収入1位」といった劇場公開時の興行実績が、2次使用以降のマルチユースビジネス、例えばビデオ化、TV放映、キャラクターの商品化などにおける作品の価値を決定する重要な要素になるからです。
一方日本の流通業大手のマイカルは、生活者の消費支出の質的変化、「モノからコトへ」といったニーズに対応すべく、商品とともに、生活をエンジョイするための娯楽ソフトを提供できる時間消費型の大型商業施設の開発を進めていました。
こうした背景のなかで1991年タイムワーナーグループとマイカルグループの合弁会社として株式会社ワーナー・マイカルが設立されました。

昨年はスクリーン数、観客動員数ともに前年を上回りましたが、昭和30年代に全国に7500近いスクリーンがあり、年間11億人の観客を集めていた日本映画興行界も平成5年にはスクリーン数わずか1734、観客動員数1億2千万人にまで衰退してしまいました。こうした映画館離れの原因はどこにあったのでしょうか。
私達は欧米の映画興行界で成功を収めたマルチプレックスシネマによって、人々が再び映画館に足を運ぶようになると確信を致しました。
映画離れの原因のひとつは、生活者のライフスタイルの変化に多くの映画館が応えていなかったことでしょう。つまり経済成長に伴って広域化する都市空間のなかで、より余裕のある住空間を求めて生活者は郊外へと住まいを移動させました。日常生活の場である郊外の住宅地と、仕事の場であるダウンタウンの機能の分離が次第に進んできたのです。週末にショッピングや映画を楽しむために通勤と同じ経路をたどってダウンタウンに出かけてゆくことは多くの生活者にとって不自然になってきたのです。
いまでは、週末に余暇を楽しむ生活者は自家用車を利用してゆけて、さまざまな娯楽がひとところで間に合う、そんな施設を求めています。こうした生活者のライフスタイルの変化に対応して、ショッピングセンターも、専門店も、レストランも郊外の幹線道路沿いにその立地を求めました。ワーナー・マイカルの映画館も積極的に郊外型ショッピングセンターに進出しています。

もう一つ従来の映画館がおろそかにしてしまったのが顧客サービスではないでしょうか。映画館は、映画という商品を快適な環境で充分なサービスを添えて提供しなくてはなりません。私はワーナー・マイカルに携わる前は20年間流通の現場、熾烈な競合店との競い合いのなかで顧客サービスと顧客本位の発想の重要性を学んできました。
残念ながら最近まで「いらっしゃいませ」とか「ありがとうございます」といったサービス業の原点となるあいさつが聞こえてこない映画館が多かったことを否定できません。
ワーナー・マイカルではおもてなしの心でお客さまを迎え、どうしたらお客さまに喜んでいただけるかを常に考えながら運営してゆけば、よりたくさんのお客さまが「映画館で映画を見る」ためにご来場いただけると信じております。

ワーナー・マイカルは設立から7年目とまだよちよち歩きの会社です。
都市の構造変化と映画館の減少により、人口10万人を越える町でも映画館がなく、見たい映画を気軽に楽しめないお客さまが全国にまだまだいらっしゃいます。
今年末でやっと全国に20ヵ所のマルチプレックスシネマを開業してきましたが、今後も積極的に劇場建設を進め、インフラとしての映画館を増やし、楽しい映画をよりたくさんのみなさんに提供してゆきたいと考えています。


安道 肇(あんどう・はじめ)
1951年生まれ。1974年、日本大学法学部卒業。同年、(株)ニチイ(現マイカル)入社。同社で主に販売促進担当後、1993年、(株)ワーナー・マイカル出向、現職。