カルフォルニア・レポート
「アメリカでの仕事雑感」


最近は皆さんの周りにアメリカでの生活経験や出張経験のある人が増え、それだけにアメリカ人がどのように仕事をし、何を考えているのかを耳にする機会が多いと思います。これまでのアメリカでの数年間の生活経験の中で、仕事に関連し日本と比べ事情が違う点を中心に、私なりに感じたことを紹介したいと思います。

■仕事の分担
皆さんもご存知でしょうが、アメリカでは仕事の分担がはっきりしすぎているため日本では考えられないことも起こります。例えば、人から受け取った複数のチェック(小切手)を銀行にデポジット(預金)に行くとします。窓口の担当者は、チェックの裏面に受取人のサイン(またはスタンプ)があるかを確認したうえでお客様が書き込んだ合計金額を端末にインプットするだけで、チェックの金額およびその合計がお客様が書き込んだ伝票とあっているか検査しません。伝票記入欄の合計金額が間違っているとあとでわかった場合、別の担当者が連絡と手続きを取ります。連絡をとる面倒が増えると思うのですが、窓口担当者はまさに受付しかしないというわけです。

似たようなことは電話の受付にもあります。単なる受付しかしない人に、話したい内容をしゃべってもピシャリと断られます。日本から来ているある銀行の方の話ですが、「わずかな金額の間違いを防ぐために予防的に何度も検査するより、間違いに気づいたときに直せばいいではないか」と現地社員はいうそうです。そういった社員には、間違いがあったとき日本から派遣された上司がお客様に謝りに行く気持は理解されないようです。

前述のデポジットの受付などは、おそらく確率的に間違いが少なく、窓口業務を迅速に処理するためにやっていることかもしれません。また、後者の電話受付の専担者はともかく短時間に多くの問い合わせを分けることだけが目的で、メカニックな電話受付システムを入れるより安上がりだという計算があるのかも知れません。どちらが合理的なのか、程度にもよると思いますが、考えさせられる場面です。

社員の仕事の内容をかえることは、給料も変えることを意味します。日本だと、比較的気軽に違った仕事を頼めるのですが、事前に採用時に通知した仕事の範囲でないと、簡単にはオーダーできません。自分の仕事でないとはっきり断られます。一時的な仕事で、お願い口調で頼み、相手の同意があるときしかできません。それでも借りを作りたくないため、滅多なことでは頼みません。


■仕事に対する評価
たいていの会社では、年に一度本人の評価を行います。あわせて、その先1年間の給与を決めます。本人と面接を行うところまでは日本と同じなのですが、会社の本人に対する評価をぶつけてそれを議論し納得してもらう必要があります。もちろん、本人と意見が対立するところも場合により出てきます。誉める点、改善してもらう点をはっきり本人に伝えます。最後には、評価に関して承諾を求めるため本人にサインをしてもらいます。評価はそれまでの1年間が対象ですが、評価する時期が近づくと社員の仕事ぶりが以前よりよくなっているような気がします。人間、考えることは似ています。


■コンピュータ化のなかでの電話への信頼
アメリカは、コンピュータを使うことでは最先端を走っていますが、ベーシックな音声通信が意外と重要な地位を占めています。例えば、銀行から送金する場合を考えます。お客様がコンピュータで取引きしない場合、Faxでの依頼はIDの特定が難しいため、日系の銀行の支店以外、原則取り扱いません。まず、銀行はお客様である会社の特定の権限者に(郵便で)特定の数値(一種のID)をあらかじめ知らせておきます。送金依頼主が正当かどうか、送金の金額が正しいかどうかを特定の数値と送金金額を足した合計数値を電話で言わせることにより、確認をするといった方法をとります。もちろん、お客様のコンピュータからログインし、複数のパスワードを使い送金する方法もありますが、これは頻繁に送金する必要のある会社であれば便利ですが、そうでない会社は先の電話による確認方法で送金するわけです。

似たようなことは、インターネットでオンラインショッピングをするときも当てはまります。クレジットカードの番号をインプットしたくなければ、まずカード番号以外のすべての情報をインターネットで送ります。その後、指定されたフリーダイヤルにかけると、オペレータがこちらから既に送ってある情報を見ながら、本人の確認をするとともにカード番号を聞いて投入することになります。

上記の例とやや趣旨は違いますが、電話がFaxよりも優先される場合として、医療保険の申し込みをするときがあげられます。社員が入社して一定の期間が経過すると会社として保険の申し込み手続きをします。Faxで申込書を送っても手続きが完了するのは数日かかるため、大半の保険会社がそうだとは思いませんが、電話での申し込みを勧奨しています。本人の名前、住所、入社年月日、ソーシャルセキュリティ番号等必要な情報をすべて口頭で連絡します。完了すると、確認番号をくれますので、後で問題が起こっても対処できます。

似たケースとして、以前働いていた会社が使っていた給与計算会社は、給料の投入、計算、送金を電話でしか受け付けてくれませんでした。しかも給与計算会社が計算日になるとコールするだけで、お客様のほうから電話を掛けられないというサービスをやっていました。担当者は給料投入日の午前中になるといつ電話がかかってくるかわからないため、トイレにも行くのに気が引けるという状況でした。その時不在であれば、あと数回かかってくるのですが同じ人からはまずかかってきません。常に、そのトランザクションがペンディングのときはコンピュータで顧客リストを見た手すきの担当者が電話を掛けてきます。電話ですからたまには数字の間違いもありますが(その場合は2枚の明細を渡すことになります)、それでも立派にそのサービス業は成り立っていました。社員をフル稼働で使っているようでした。
国が違えばやり方が違うものの結果は同じで、慣れればそんなに気にもならなくなりつつあるこのごろです。

カリフォルニア技術センター
次長 川北栄一