課題発見
快適性、効率性、安全性が調和するオフィス環境を創造する

株式会社岡村製作所


<オフィス総合研究所の位置づけとその研究の歴史>
当社は「人間を大切にした環境創造企業」をコンセプトに、あらゆる空間構築のハード開発に合わせソフト面での研究・開発にも力を注いでいます。その中で環境構築におけるソフト面の研究・開発や実際の運用管理を行っているのがオフィス総合研究所です。全国に配置されているスペースデザインチームと一体となり、トータルなオフィスづくりを支えています。

■オフィスの基礎研究からスタート 現在ではトータルなオフィス環境の構築をメインにした提案活動を行っていますが、まだオフィスにおける環境に目が向けられなかった時代には、家具の製造・販売が主たる業務であったわけです。
研究活動を開始した1975年頃から、主にプラニングシステムを中心に、オフィスのスペース分析と規模別必要スペースの算出方式を研究していました。ハードを納入するための販促資料の開発から着手したわけです。企業が移転する時どのくらいのスペースが必要か、また並行して1人あたりの施設コストはどのくらい必要になるかといったプラニングの基礎を中心に研究活動を開始いたしました。

■オフィスオートメーションの時代へ 研究所における研究課題に大きく変化があったのは、1980年頃からです。オフィスオートメーション、つまりOA化という言葉が日本でも使われ出した時期からです。
対向式レイアウトが中心だった時代から多少変則的なレイアウトもこの時期誕生し、オフィスデザインといった言葉も使われ出した時代です。当時は多少生産性の向上といったニーズもあり、部門間のコミュニケーションをどの様に円滑に行うかという研究課題にも取り組みました。またその頃からコンピュータを操作するときの作業姿勢とか、照明の画面への映り込みなど人間工学の内容の問いあわせが増加しました。そのため熱や音を含めたトータルな環境に関する阻害要素の研究に着手しました。

■ITの普及と働き方の変化 最近ではIT(インフォメーションテクノロジー)の普及によって、これまでとはかなり違ったオフィスの環境構築が求められています。テクノロジーの普及によってオフィスでの働き方そのものが大きく変わり、情報の加工性と業務の効率化により、高い生産性が求められています。まさに生産性とオフィス環境の最適化が経営課題になっているわけです。今までは環境やスペースに関連する項目を重点課題にしてきましたが、ITの普及とワークスタイルの変化が業務にどのように影響を与えるのかといった項目に加え、オフィスの生産性がどれくらい向上するかといったテーマを研究し始めているのが現状です。


<環境問題への取り組み>
■世界共通のテーマである環境問題に対する取り組み
環境問題に関してはメーカが取り組まなければならない基本姿勢と考えています。環境に対する理念や方針がない企業は、将来生き残っていけないのではないでしょうか。人間生活と自然が持つ能力のバランスが崩れつつある現在、環境問題が全世界で大きなテーマになり、日本を含めた世界各国で取り組みがなされています。オフィスにおいても環境対策として検討しなければいけない要素は山積みにされています。多くの人が集まる特性からしても、省エネルギーの推進も含め重要な課題が多数あります。

1997年からオフィス活動における環境側面の究明をさまざまな方向から調査分析を進めてきました。オフィスから排出される環境影響項目の洗い出しと情報収集活動を開始し、その結果オフィス構築の各段階でどのような環境に影響する配慮項目があるかといった点を導き出したのです。オフィス空間づくりの専門集団として、環境対策は短期間に構築すべきテーマであったわけです。約半年の情報収集とシステム開発により、オカムラとしてお客様に提案する環境配慮プログラムを導き出しました。現在この環境配慮項目は全国のデザイナーの基礎知識として広く空間構築に役立っている、と考えています。

■オカムラ全社の環境問題への取り組み
オカムラでは、「すべての企業活動を通じ、常に最適な環境技術と行動で『地球環境の保全』と『ゆたかな社会』づくりに貢献する」という環境理念のもと、1997年4月に全社の環境行動目標として「GREENWAVE21」をスタートさせています (図1)

まず工場部門で業界に先駆けて、ISO14001とISO9001認証を取得し、その後企業活動の源流に環境マネジメントシステムを導入しました。さらにその延長として、1997年末にオフィスにおける環境対策を究明するプロジェクトチームを発足させました。

■ニューオータニオフィスの役割
当研究所があるニューオータニオフィスには、コンサルティング部門、製品企画部門、それから私どもオフィスの研究部門が入居しています。引越しを契機に、1998年10月にISO14001の認証を取得しました。これは当業界初のオフィスサイトにおける認証取得になります。

ISO14001認証取得のもっとも大きな目的は、短期間で当社が提供する製品とサービスの環境側面を明確にし「お客様へ環境に対する取り組みを還元」することにあります。つまり環境問題を日々の企業活動や開発業務に取り入れ自ら学ぶことに合わせ、そこで学んだことをビジネスに役立てようという目的がありました。オカムラでは多くのお客様のオフィス移転のお手伝いをさせて頂いています。このようなお客様に環境配慮型のオフィスづくりを提案していくことで、環境問題に貢献できるのではないかと考えています。

1997年から開始していた環境配慮型空間構築研究がこのISO14001取得プロジェクトに生かされたことは言うまでもありません。どのようにして環境配慮型の空間を作れば良いのか、また環境提案をお客様に対してどのように伝達すれば理解が深まるかといった点を含め、空間構築プログラムの精度を高める研究開発も行っています。もちろんお客様にとってはコストおよび運用面で受け入れていただけないケースもあります。しかし、このような環境配慮の空間構築を広げていくことが私たちの使命と考えています。

また、コンサルティング部門では、最近独立した株式会社FMソリューションがあります。ここではオフィス環境に関するコンサルテーションを軸としたサービスを提供しています。ファシリティマネジメントとしての環境配慮型の施設管理がどれだけ出来るかという目標値を設定して、積極的に提案活動を行っています。

製品企画部門では、製品を企画・開発する基本となるセクションです。リサイクルしやすい素材の優先的使用、素材別に分解するための分別設計、材質の表示というアプローチのもと環境配慮型の製品を生み出しています。


<最近の研究課題>
■ ライフスタイルとワークスタイルの変化にともなう新しいオフィスのコンセプト
このような全社的な環境理念をもとに実施した基本的活動もさることながら、いまもっとも個別研究課題として取り組んでいるのが、SOHOをはじめとしたオルタナティブオフィス(分散化オフィス)における働き方です (図2)。この課題を考えるにあたり、当社では休日を含めたライフスタイルの変化とワークスタイルの変化に着目しています。

まずライフスタイルの変化を考えていくと、これはさまざまなITの発展と普及なしには考えられません。たとえば主婦はインターネットで買物をし、子供は家にいながらインターネットや学習ソフトで勉強をするということが、もはや珍しいことではありません。 さらに銀行の振込や支払、書籍や雑誌の購読などもインターネットで行うことができます。
ワークスタイルに関しては、組織形態と雇用スタイルの変化が最近の企業では顕著です。これはビジネススピードや生産性向上を考えた結果で、管理という枠を外し縦型組織からフラット型組織を導入したり、終身雇用制度を変えていこうとする企業が増加しています。

また家庭や企業にパソコンが普及、導入され、携帯電話やPDA(PersonalDigitalAssistants)など携帯可能な情報端末が次々と開発されたことで、多くの情報がさまざまな場所で入手できるようになりました。その結果、時間と場の定義が劇的に変化したわけです。
ライフスタイルとワークスタイルの変化に関する調査結果を受け、当社でも新しいオフィスのコンセプトを提案し商品化しています。 まず、予約制でオフィスを使う「ホテリング」と自席を持たない「アクティビィティ・セッティング」、さらに不在者のオフィス環境の有効利用「グループアドレス」という考えがあります。たとえば営業職やエンジニアは長期的もしくは定期的にクライアントに行く機会が多く、自席に座る頻度は減少しています。またオフィスワークが中心の場合でも、会議やディスカッションに参加するために、一日中同じ席で仕事をするといったことも少なくなると考えています。そこで席やテーブルの使用を予約制にする、もしくは業務にあわせて適切な環境を選択するという考え方が生まれました。

さらに、このワークスタイルは「出張先での空き時間や移動中に仕事をする空間」というモバイルオフィスの概念にも通じます。このような働き方をするワーカーは、拠点とするオフィス以外に短時間の業務処理や電子メールの確認などを行うところが必要になります。これが「タッチダウンオフィス」と呼ばれるワークプレイスです。
実はニューオータニオフィスでもタッチダウンオフィスがありますが、ここでは地方からの営業担当者がお客様をショールームにご案内する前の準備や新商品の情報収集のために使用しています。また、大きな空港やホテルにあるビジネスセンターやインターネットカフェなどもその役割を果たしています。

最後に、オフィスそのものを捨ててしまおうという「ホームオフィス」の考えがあります。時間と行動を個人で管理し、情報通信技術を利用して自宅で勤務してもらおうという執務形態です。この考え方は第一線で働きたい女性や身障者、高齢者の声を積極的に受け入れていこうという雇用の変化にも対応しています。
これまではフェイスツーフェイスのコミュニケーション、もしくは文章によってしか意思を伝達する方法がなかったのですが、ITの発達と通信インフラの整備にともない、会社に行かなくてもデジタル化された情報が入手できるようになりました。情報化社会の到来で、データにアクセスでき、会社にいると同じ環境が整えば、集合体であるオフィスに通って仕事をしなくてもいいのではないかという考えが、米国を中心に日本でも広がりつつあります。
時間対時間でワーカーを管理するという考えではなく、知的生産のアウトプット量で管理するなら、そこではじめて働き方は自由になり、オルタナティブオフィスが可能になるわけです。
しかし直行直帰のテレワーク、モバイルオフィスでの勤務、在宅勤務等、いずれのワークスタイルを選択しても、最終的にはセンターオフィスにおける、フェイスツーフェイスのコミュニケーションが重要な要素になるでしょう。


<21世紀におけるオフィス環境文化の提言>
日本のビジネス界は今まで経験したことがない厳しい状況に立たされています。そこで経済的に見事な復活を果たした米国を見習おうと、日本でも情報化を活かしビジネス改革に新たな活路を見い出そうとしています。さらに環境問題、少子化による労働力確保の問題、オフィスにおける生産性の問題など、私たち企業が積み残し21世紀に向けて解決しなければならない課題が数多くあります。
生産性の問題を考えると、日本は戦後の混乱期から、共同作業に加え長時間労働により工場の生産性を高め、現在の繁栄を築いてきました。しかし今後の日本のビジネス社会では、オフィスでの個人の知的生産性とビジネススピードを高めるための組織戦略を含めた業務改革が必要になります。情報化オフィスの構築がそのひとつの答えなのです。

21世紀の情報化オフィスの形態は、これまで述べてきたように場と働き方の定義が激変すると考えられます。そこにはさまざまなワークプレイスが誕生しているでしょう。21世紀のワークプレイス造りはデザイン性より、むしろ運用面でのソフトが重要になってくると思います。
情報化初期の時代、1990年初期は「もの」中心の情報社会でした。それが今では情報機器や通信インフラの発展で「情報」中心の環境が構築されています。そしてこれからは「人」を中心とした「もの」と「情報」の調和がもっとも重要なテーマになるでしょう (図3)。人間中心の情報化とハード環境の融合ができたとき、はじめて生産性の高いオフィスが生まれると考えます。

2000年になってもオフィスの基本は変わりません。自らの進路を決めていく企業にとって、オフィスはいわばコクピットのようなものです。しかしそこでどんな機器が手助けしようとも、考え、創造し、判断して、最終的に決断を下すのは人間です。 人が心地よくさわやかに暮らせる快適性、より新しい創造力が発揮できる効率性および安全性との調和がワークプレイスの必要最低条件です。それはおそらく本来のオフィスでも変わらないでしょう。








株式会社岡村製作所 オフィス総合研究所
所長

甲斐慶一


■株式会社岡村製作所 会社概要
設  立 1946年(昭和21年)
資 本 金 186億7,000万円
代 表 者 代表取締役社長 中村喜久男(なかむら・きくお)
従業員数 3,048名(1998年3月現在)
売 上 高 1,886億円(1998年3月期)
事業内容 ◎スチール家具全般の製造・販売
◎産業機械その他の製造・販売
◎金属製建具取付工事の請負
◎建築業に関わる付帯工事・設計・製造・販売
◎商品陳列機器その他の製造・販売
◎事務所の環境向上と事務・生産効率向上に関する情報の提供とこれに関連する機器の製造・販売
所 在 地 本社/202−0004 横浜市西区北幸1−4−1天理ビル19F
工  場/横須賀、富士、御殿場、つくば、山形、中井
支  店/全国97支店(1998年3月31日現在)