課題発見
信頼性・稼働性にすぐれたオープン・プラットフォームの提供

株式会社東芝


<ソリューションとプラットフォームを広義にとらえた事業展開>
総合電機メーカである当社は、大別して次の四つのグループから構成されます。
「情報通信システム事業」「電力・産業システム事業」「電子デバイス・材料事業」「家庭電器事業」の4つですが、このうち、近年急速な拡大を見せているのが「情報通信システム事業」であり、IT(インフォメーション・テクノロジ)への注力を最も重要な戦略と位置付けています。EC(エレクトロニックコマース)市場をターゲットにしたWebサーバ関連ソフトをNTTソフトウェアと共同開発し、事業展開しているのも、そうした戦略の一環です。

■カンパニー制への移行
当社は1998年4月に情報通信システム事業については大幅な組織変更を行い、ITの分野を、システムインテグレーション事業と、それを下支えするプラットフォーム・プロダクト事業という形に二分化しました。情報通信・制御システム事業本部がシステムインテグレーションを担当し、情報通信機器事業本部がプラットフォーム・プロダクトを担当するという両輪でIT分野に取り組んできたわけです。
さらに、99年4月からはカンパニー制に移行しました (図1)
情報通信・制御システム事業本部は新たに「情報・社会システム社」として生まれかわり、これまで重電分野に属していたプラント制御といった事業も取り込んで、社会情報システムという広範な観点からソリューションビジネスに取り組んでいきます。情報通信機器事業本部は、コンピュータと通信と映像の融合をにらみ、「デジタルメディア機器社」として、デジタルメディア全体を一括したオープンプラットフォームの事業に注力します。オープンプラットフォームを提供する事業と、それを用いたシステム構築のフレームワークを提供するソリューション事業が、より鮮明に色分けされた事業運営となるのです。

■ネットワーク系のオープンプラットフォーム
そうした流れの中で、私どもが特に力を入れて取り組んでいる事業の一つが、インターネットを中心とするネットワーク系のオープンプラットフォームです。 いま、各企業が最も注目している課題は、従来のメインフレームを中心としたシステムから、いかにオープンなプラットフォームに移行していくか、ということだと思います。クライアントサーバ型のシステムが注目されだしてから久しく、現に定着しつつあるわけですが、実のところ業務処理の基幹部分ではそれほど普及が進んでいないのが現状です。最大の原因は、UNIXにしても、WindowsNTにしても、まだまだ信頼性とパフォーマンスの面でメインフレームのソリューションと差があるからです。したがって、高いコストを払ってでも相変わらずメインフレームを増設していくというケースが圧倒的に多いのです。

■オープン系システムの不安を解消
この点についても一つのソリューションを提供するのが私どもの使命の1つにほかなりません。そこで、信頼性、高稼働性、セキュリティのすべての面において、オープン系のシステムにつきまとう不安を解消するプラットフォームを提供することに主力を注いでいます。その具体化の一例が、UNIXとWindowsNTに対応した当社のクラスタソフト「DNCWARE」(ディーエヌシーウェア)とNTTソフトウェアの提供による、データべースとの連動機能を持つイントラネット構築ツール「WebBASE」(ウェブベース)との組み合わせであるわけです。

■信頼性とコストの問題
情報システムはもはや企業運営の中核ですから、高い信頼性が期待されるのは当然のことです。しかし、だからといって、そのために何倍もコストをかけるわけにはいきません。今のお客様のご要望を端的に言えば、現行のシステムが二分の一のコストにならないか、ということなのです。それにできるだけお応えするために、価格もランニングコストも相対的に安い組み合わせを選びますが、その時に最も留意すべき点は、やはり信頼性です。一日に一回でもシステムダウンしたら、使いものになりません。低コストをめざしたがゆえに信頼性がおろそかになり、結果的に高いものについてしまったら、元も子もないわけです。とはいえ、ハードウェア単体で差別化をはかるのは、もはや難しい状況となっております。

■ミドルウェアの重要性
重要な点は、そのハードを何台か並べて動かした時、何か障害が起こったら、きちんとその原因を切り分けて修復し、全体のシステムは異状なく動き続ける仕組みを作れるかどうか、にあるわけです。したがって信頼性を向上させるために、どのような組み合わせで、どこの部分に手を加え、全体をどのようなミドルウェアでつなぐのが最適か、というマネジメントがきわめて重要になってくるわけです。
インターネットによるECの分野では、リアルタイムかつピーク処理にすぐれたWebサーバが不可欠ですが、これを企業の情報システムと連携させるためには、大規模な基幹システムにも使えるものでなければなりません。そうしたニーズに応えるミドルウェアとして、先の「WebBASE」、「DNCWARE」などを組み合わせて提供する事業展開を進めております。
その他にもNTTソフトウェアの「WebBASE」と、当社のトランザクション処理ソフト「ATPS」(エーティーピーエス)を連携する共同開発などがあります。アプリケーション開発がしやすく、さまざまなマルチメディアとの融合が可能なフロントエンドサーバとしての「WebBASE」の特長の上に、大規模システムへの拡張性と信頼性にすぐれた当社の「ATPS」を組み込むことによって、EC市場に適用できる信頼度の高いアプリケーション・サーバを提供することができると考えております (図2)

■広義のプラットフォーム
当社がオープン・プラットフォームという時の「プラットフォーム」とは、単にハードウェアやOSではなく、ミドルウェアやシステム環境といった上位層までカバーする広義の捉え方をしています。単体のソリューションではなく、全体を流れとしてとらえた時のプラットフォームです (図3)
例えばこれも当社の注力分野であるモバイルコンピューティングにおいて、端末、すなわちクライアント自体の性能は大切です。しかし本当に重要なのは、「物理的な場所が動いた」ことを意識せずに本社のデータベース、すなわちサーバにいかに快適にアクセスできるか、外部からの侵入を妨げるセキュリティがきちんと働いているか、という点です。クライアントとサーバの組み合わせに加えて、実際にはこのようなミドルウェアが多く付随しており、そこを中心としたプラットフォームを提供することが当社の主眼となります。


<日本企業巻き返しのチャンス>
■アメリカの後追いではいけない
ポストバブルの不況下で、日本の社会全体が大きく変わろうとしています。その中で、マーケットが真に望むものをいかに的確に打ち出していけるか。これが最大の課題だと考えております。 例えばインターネットという、今マーケットを席捲しているものに対して、当社を含めた日本のメーカはこれまでどのように取り組んできたのでしょうか。大きな反省材料としなければならないのは、明らかにアメリカに遅れをとってきた点です。 シリコンバレーを中心としたハイテク産業が急成長を遂げ、現在のアメリカの好況を支えています。日本もそれに後追いしていますが、その差は広がる一方だという認識を持っています。なぜなら、金融ビッグバンなどの一連の規制緩和の動きも、すべて後手後手に回っているからです。このままの状態で進んでいくと、日本経済の立ち直りは難しいのではないかという危機感が拭えません。

■情報家電を突破口に
では、将来を見据えた時、どこに巻き返しの突破口があるのでしょうか。通信とコンピュータの融合では確かにアメリカに遅れをとりましたが、情報家電の分野にはチャンスがあると思っています。テレビとコンピュータ通信の融合、すなわちテレビのデジタル化については、ぜひイニシアティブをとりたい。なぜなら、少なくとも現時点で家電は、日本が抑えているからです。ご承知の通り、アメリカにはテレビやDVDを作る会社はありません。オーディオの世界にも強いです。コンテンツにかけてはアメリカが圧倒的に強いですが、それを家庭にデリバリーする部分では、十分にチャンスがあると考えています。
それを実現するためには、組織改革も重要です。インターネットへの取り組みが遅れた原因をメーカサイドから考えると、コンピュータの事業部門とネットワークの事業部門が分かれていて、カルチャーが異っていたことが大きかったと思います。一緒になって何か新しいことに取り組む発想がありませんでした。冒頭で述べたような当社の大幅な機構改革も、事業部門の統合によって異質な価値観の融合をはかり、新規事業への柔軟な対応を行っていくという意図があるのです。

■マーケットを創出する
インターネットはマーケットのニーズから生まれたものでしょうか。そうではありません。インターネット自体が新しいマーケットを創出したのです。これと同じように、情報家電についても、新たにマーケットを創り上げるというコンセプトで取り組むべきなのです。 良い製品を安価に製造する能力を持つ企業は、当社以外にもたくさんあります。そこで話は元に戻りますが、システムインテグレーションやコンサルティングといったトータルソリューションの提供と、オープンプラットフォームの提供、この二つの分野を事業の柱として、当社の強みを発揮していこうという考え方なのです。

■グローバル化への取り組み
グローバル化の進展もこれからの重要な戦略です。パソコンではすでにかなりグローバル化が進んでおり、欧米でもトップシェアを持っているのですが、実のところサーバは今まであまり海外には進出していませんでした。
しかし、お客様のほうからも、クライアント、サーバ、ネットワーク機器すべてを抱合したワンストップサービスのご要望が強くなっておりますので、それに対応した戦略を着々と進めております。アメリカではすでにサーバの販売を開始しましたし、中国でも合弁会社を設立しました。大風呂敷を広げるようですが、「日・米・欧・中」の四極体制を敷いてグローバル化に力を入れていくつもりです。
同時に、例えばインターネット上の電子マネーに代表される、一企業一国家の利害を超えてグ ローバルなルールを確立しなければいけない問題についても、当社のトップがネット上のプライバシー保護に関するサブコミティの委員長をやらせていただくなど、積極的に関与しております。


<プラットフォーム・フリーの方向へ>
これからは、本当に純粋な意味でのハードウェアで勝負していく部分は、非常に小さくなっていくだろうと思います。OSも、おそらくいくつかの標準的なプラットフォームに集約されていくでしょう。アプリケーションソフトに関しては、お客様別にカスタマイズされた領域は、もちろんある程度は残るでしょうが、その比率はしだいに小さくなっていく可能性があります。コストのことを考えると、あらかじめパッケージされたソフトを効率的に組み合わせて利用したいというご意向が強くなっているからです。
そうなってくると、それらを下支えするミドルウェアやツールを含めた開発環境の整備がますます重視されるでしょう。特定の領域に特化した、あるいはニッチを狙うソフトが続々と登場してきますが、それらをいかにプラットフォーム・フリーにしてマーケットを拡大し、お客様から見たトータルのコストを低減していくかが、今後重要なポイントになっていくと考えております。



●本社事務所
●株式会社東芝 会社概要
創 立 1904年(明治37年)
資本金 2,749億円(1998年9月末現在)
代表者 取締役社長 西室泰三(にしむろ・たいぞう)
従業員数売上高 66,259名(1998年9月末現在)
        3兆6,999億円(1997年度)
事業内容
◎情報通信システム
◎電子デバイス・材料
◎電力・産業システム
◎家庭電器
所在地 本社/210-8572川崎市幸区堀川町72番地
    本社事務所/105-8001東京都港区芝浦1丁目1番地1(東芝ビルディング)