
IFRSが影響を与えるシステムとしてすぐに思い浮かぶのは、当然会計システムでしょう。しかし、IFRSの影響はそれだけにとどまりません。業務系システムにも相当の影響が想定されます。
IFRSにおいては、売上計上基準の変更、棚卸資産の範囲の変更や原価算定方法の変更、固定資産の減価償却の扱いの変更、リース取引の根本的な変更、未消化有給休暇の費用計上などが必要になります。これらの変更に伴い、販売管理システム、購買管理システム、在庫管理システム、固定資産管理システム、リース管理システム、人事給与システムなどに対して少なからず影響が出ます。
また、各業務系システムで発生したトランザクションを財務会計システムにインタフェースするタイミングやデータ項目も影響を受けます。
IFRSの財務諸表は、2011年を目標に大幅にフォーマットが変更される見通しで、キャッシュ・フロー計算書については直接法のみになると言われています。このような開示方法の変更は財務会計システムに直接的な影響が出ます。
さらに、今まで日本では行われていなかった財務諸表の過年度遡及修正も必要になります。遡及修正と言っても、一度締まった会計データに対して、文字通り遡って上書き修正するなどというのはシステム的には御法度ですから、具体的な遡及修正の方法を考えなければなりません。加えて、過去何年分の会計データを保持するかも問題になり、ディスク等のハードウェアの増強が必要になる可能性もあります。
IFRS適用後に作成が必要な財務諸表は、最終的には日本基準ベースの個別財務諸表とIFRSベースの連結財務諸表です。さらに、IFRS初度適用時には過去2期分の財務諸表(財政状態計算書は過去3期分)の開示が求められますから、少なくともこの期間は日本基準ベースの連結財務諸表を開示しながら、IFRSベースの連結財務諸表も作成しなければなりません。
連結財務諸表を作成する際は、連結対象会社のすべて財務諸表をIFRSにそろえてから連結しなければなりません。既にIFRSが強制適用されている国が100カ国以上と言っても、個別財務諸表は各国の会計基準のままであることが少なくありません。ということは、どこかのタイミングで誰かが各国ローカル基準ベースの財務諸表をIFRSベースに組み替えることが必要になります。
つまり、システムが対応しなければならないことは、単にIFRSという1つの会計基準に対応することではなく、日本基準や各国ローカル基準を含めた“マルチ・スタンダード”に対応することなのです(図)。このことをよく理解しておかなければなりません。

「どこかのタイミングで、誰かが各国ローカル基準ベースの財務諸表をIFRSベースに組み替えることが必要」と言いましたが、子会社・関連会社がそれぞれにそんなことをやることは、時間的・能力的に現実的でないケースが多々出てくるでしょう。ましてや、IFRSのためにシステム投資を喜んでする子会社・関連会社は少ないはずです。
そう考えると、今後はシェアード・サービスに対するニーズが一気に高まる可能性があります。IFRSの原文は英語ですから、日本人以外でも(むしろ日本人以外の方が)理解できますから、シェアード・サービス・センターを海外に置くことも十分にあり得ます。例えば、オラクル社は会計のシェアード・サービス・センターをインドに設置して、シングル・インスタンスの会計システムをグローバルで実現しています。
以上から分かるように、システムをIFRSに対応させるプロジェクトは、全世界のグループ企業全てを巻き込む一大プロジェクトになります。しかも、IFRSは原則主義ですから、要件定義の前提となる会計方針を、グループ全体で合理的かつ統一的に定めなければなりません。
つまり、IFRSに対応するプロジェクトは、多くの日本企業が非常に苦手とする「決め事」だらけのプロジェクトになるということです。従来よく見受けられる、誰が意思決定者なのかさっぱり分からないようなプロジェクトのやり方だと、何年あってもIFRSには対応できないでしょう。