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ソリューションコラム / IFRS 2010年7月

金子 智朗 氏 ブライトワイズコンサルティング合同会社 代表社員、公認会計士・税理士

第4回 IFRSと内部統制

ますます重要になる内部統制

金融商品取引法に基づく内部統制、いわゆるJ-SOXは、当然のことならIFRSになってもなくなるものではありません。むしろ、ますますその重要性が高まります。

その大きな理由は、IFRSが原則主義であることにあります。原則主義においては会計処理や表示の方法が画一的に決められていませんので、合理性を根拠に各社がそれぞれに判断して定めることが必要になります。監査上も、従来のように、どこかの基準に書いてあるか否かではなく、合理的か否かで判断することになるでしょう。

合理的と言っても、その判断は主観的にならざるを得ません。主観的であることは恣意的であることと隣り合わせです。例えば、毎年の見直しで減価償却の耐用年数を変更することになった場合、「変更することが合理的だと思ったから」だけでは、少なくとも監査上は通らないでしょう。

そこで、耐用年数の変更要件をあらかじめ定めておき、それに従い判定するような統制が必要になるでしょう。変更要件の設定・見直しは取締役会レベルの機関決定を要することとし、実際に耐用年数を変更する際も同等の機関決定を要するというような定めも必要になるでしょう。このような内部統制を整備・運用していることが、対外的に合理性を主張する最低条件になると思われます。

売上計上基準の変更も内部統制で対応

金子 智朗 氏 ブライトワイズコンサルティング合同会社 代表社員、公認会計士・税理士

IFRSと日本基準の差異に伴い、新たに必要となる内部統制もあります。例えば、売上計上基準を出荷基準から検収基準に変更しなければならなくなったとしましょう。その場合、従来の業務プロセスとシステムに対する影響を最小限にする1つの現実的な方法として、日々の取引記録は従来通り出荷基準で行い、決算期に出荷済み・未検収の取引を抽出して、それに対して売上減額修正を行うという方法が考えられます。

この方法を実現するためには、「決算期に出荷済み・未検収の取引を抽出し、それに対して売上減額修正をする」というコントロールを追加する必要があります。具体的には、期間帰属の適正性を検証するためのカットオフ・テスト(締切りテスト)の一環としてやることになるでしょう。

スキル向上が重要な課題に

内部統制報告制度の初年度である2008年3月期において、「重要な欠陥」を開示した企業は56社ありましたが、そのうち最も多かったのは決算・財務報告プロセスに関するものでした。そして、最も多かった原因は「経理部門の知識・スキル不足」です。私の経験上もこれは実感に合っており、中でも新しい会計基準に対する理解不足が原因となっているケースが多々ありました。

IFRSは丸ごと新しい会計基準ですから、それに対する知識・理解不足は即、重要な欠陥に結びつく可能性があります。スキル向上が、内部統制における最も重要な課題と言ってもいいでしょう。

しかも、IFRSの時代に求められるスキルは従来とは根本的に異なります。求められるのは、重箱の隅を突くような細かな知識ではなく、原理原則から演繹的に理解する論理的思考力であり、公正価値計算のための数学的素養であり、自社の会計方針の合理性を監査やIRの場で対外的に主張できるだけのコミュニケーション能力、プレゼンテーション能力です。最新のIFRSにキャッチアップするためには英語読解力も必要不可欠です。つまり、IFRS時代に求められる経理部門の人材像は「英語ができる外交的理系人間」です。従来の「英語とは無縁の内向的文系人間」とは180度異なります。

スキル向上が重要な課題に

さらにいえば、IFRSに関するスキル向上が必要なのは経理部門だけではありません。IFRSにおいては、会社の経済的実態を反映するために、将来の事業計画を拠り所に公正価値を算定するような局面が多々あります。将来の事業計画立案は、経営企画部門の仕事であり、トップの仕事です。経理部門のスキルだけを上げても意味がないことは、肝に銘じておく必要があるでしょう。

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