岩上 由高 氏
変化する市場ニーズに合わせて、柔軟かつ迅速にサービスを拡張できるクラウドへの期待感が高まっている。さまざまな業種・業態でサービス提供の場をクラウドに移す動きが活発になってきた。
国内外において多くのクラウドサービスが誕生する中、情報処理パフォーマンスの向上と、保守・管理負荷の軽減を実現するクラウド型ホスティングサービスにも注目が集まりつつある。このような状況下で、今、クラウドサービスはどのように導入され、活用されているのか。ノークリサーチ社のアナリストとしてクラウド市場の動向を注視し続ける岩上由高氏に聞いた。
(※この取材は2011年8月4日に行われたものです。記事はその当時の経済・技術状況を反映したものです。)
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| 岩上 由高
Yutaka Iwakami 株式会社ノークリサーチ シニアアナリスト。早稲田大学大学院理工学研究科数理科学専攻修了後、株式会社ジャストシステム、ソニーシステムデザイン株式会社(現ソニーグローバルソリューションズ株式会社)、フィードパス株式会社など を経て現職。クラウド市場の動向をはじめとするICT業界のリサーチ、コンサルティングを手がけている。主な著書に『AdobeAIRの基本と実践』(日経BP社)、『クラウド大全』(共著 日経BP社)など。 |
クラウドとは一体何か――。市場規模を明らかにするためには、定義が不可欠です。弊社では、以下の3つの条件を備えた情報処理システム、または構築・運用の事 業モデルを「クラウド」として定義しています。
まず、「ネットワーク経由のサービスとしてICTリソースを提供している」こと。こ れだけではASPと同じですが、2つ目の特徴「仮想化技術の活用」が差異を際立たせてくれます。クラウドは柔軟かつ迅速にICTリソースを確保できます。 そして、3つ目は「規模」です。Google、Amazonなどは極端な例ですが、リソースプール(*1)を多くのユーザーが世界規模で分け合うことで効率化、低価格化などのメリットをもたらします。
では、クラウドの導入状況についてはどうでしょうか。私たちのリサーチでは、大企業ではクラウドへの取り組みが活発化しつつありますが、中堅・中小企業(年商5億~500億円)においては関心は高まっていますが、実際の導入には至らない「検討段階」が顕著です。
中堅・中小企業では、ERP(統合業務パッケージ)などの基幹系業務システムを独自にカスタマイズし、導入しているケースが多く見られます。しかし、これらのシステムは、バージョンアップのたびにカスタマイズし直す必要があり、運用コストが非常に高くなっています。そこで、この基幹系業務システムをクラウドに移行したら、運用コストも目に見えて削減できるのではないか――。中堅・中小企業は、クラウドに対してこのような期待を持っています。
しかし、クラウド=SaaSという認識を持っている場合、クラウドへのスムーズな移行は容易ではありません。SaaSへのカスタマイズ、既存システムとSaaSの連携には高い障壁があるからです。コスト削減が十分に期待できず、使い勝手が変わることへの抵抗感も払拭できない――このような現実から、中堅・中小企業は導入を検討しているものの、現状に踏みとどまっていると考えられます。
実際のところ、カスタマイズやシステム間の連携に立ちはだかる課題は「Bizホスティング ベーシック」(NTTコミュニケーションズ)のようなIaaS、開発のプラットフォームとしてのPaaSの導入により、十分に解決可能なものです。ユーザーの注目はSaaSに集まりがちですが、クラウドの浸透には、IaaS、PaaSという選択肢の周知が重要なテーマになっていくでしょう。

【用語解説】
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