概要

激しく変化するビジネス環境を支えるシステム統合ソリューションを導入

NTTソフトウェアのソリューション事例から、今回はシステム統合ソリューションの事例として全日本空輸株式会社(ANA)を取り上げる。

ビジネス環境が激しく変化している航空業界にあって、ANA が勝ちつづけるためにいかなるIT 戦略を推進し、そのためのソリューションをNTTソフトウェアが提供したのか、ANA ・氏川氏と全日空システム企画株式会社・桑野氏、NTTソフトウェア・小泉の3 人にお話をうかがった。

課題

複雑なシステム構成が障壁に

「安心」と「信頼」を基礎に
● 価値ある時間と空間を創造します
● いつも身近な存在であり続けます
● 世界の人々に「夢」と「感動」を届けます


これはANA グループの経営理念である。ANA が常に「人命」というもっとも尊いものを預かっていることの証である。お客様には泰然自若として安心感を見せながら、その裏側では最大限の緊張を持ちつづける、それがANA である。


ミスを犯さない、100%確実な環境というのは、人力だけで構築することは不可能で、IT の力を借りることになる。当然ANA は約20 年前という非常に早い段階からIT を導入した、いわば先駆的事例だといえるが、そのIT 推進の一翼を担う氏川氏は、自社のシステムに問題意識をもっていた。まもなく2000 年を迎えようとする頃、あのY2K 対策でさまざまな企業が頭を悩ませていた時期のことである。


「私は、飛行機を安全に効率よく運航させるための運航管理系と呼ばれる社内システムを担当しています。このシステムは、大きく3 つに分けられます。1 つ目は、航行中の飛行機の位置や運航状況を管理するフライトインフォメーション系システム。2 つ目は、フライト毎の気象条件や航路を管理する飛行計画系システム。そして3 つ目が、パイロットや客室乗務員の資格・スケジュールを管理する乗務員管理系システムです。これらのシステムを、当社は20 年の歳月をかけ、大型のメインフレームを中心に、業務毎にサブシステムを開発してきました。その結果、28 個にもなったシステム間の関係がきわめて複雑になり、データの処理やその変更に多大なコストと労力・時間がかかる状況になっていました」。


ANA のシステムはまさにミッションクリティカル。24 時間・365 日停止することは許されず、常に高い安定性・信頼性を要求される。


社内システムのトラブルが原因で社内ユーザーへのサービスの質が低下すると、お客様に提供するサービスにまで影響がでて、営業的な損失を招いてしまう。そのため、運用に当たっては、細心の注意をもってデータを扱うことが要求されるが、「28 個ものシステムが共存していると、業務毎に異なる端末を使用しなければならないなど、業務の効率化に制約がでていました。これでは、企業競争力を高める上でも支障となりかねません。そこで浮上したのが、既存システムの複雑さを解消するという課題でした」。

メインフレームかオープン系サーバーか?

課題は、こうした運用面だけではない。氏川氏はさらに続ける。「システム導入から20 年ですから、老朽化の問題と常に戦わなければなりません。しかし、従来どおりメインフレームを基幹にしていては、メンテナンスにも買い替えにも非常に高コストです。しかも、時代はサーバー系に移行し、メインフレームを扱う技術者も減っています。これでは将来性にも不安がつきまといます。メインフレームの堅牢性は他には変えられないメリットですから、このままメインフレームを存続させるのかサーバー系のオープンシステムに移行すべきか、非常に難しい課題だと感じました」。


しかし、ANA はグループの理念にもあるように、安心や信頼を基礎として、その上の顧客満足を実現する企業である。とするなら、将来性の見えないシステムを使いつづけることは、お客様の利益にはなりえないのである。


こうして、2001 年、氏川氏はシステムのリニューアルを共同で担当する全日空システム企画株式会社の桑野氏とともに、サーバーを基軸にしたオープンシステムに移行する基本方針をまとめた。


「メインフレームの場合は、新しいアプリケーションは一からすべて手作りになりますが、ミスの確率もそれだけ高くなります。一方、オープン化すれば、すでに市場評価を得ているツール、パッケージが多数あり、それらを選択できます。ポイントは、サーバーでメインフレーム並みの高い性能を発揮できるのか、信頼性の面で問題はないか、でしたが、さまざまな事例からこれらはすでにクリアされているといえます。トータルに見て、もうそろそろサーバーに移行してもいい時期だと判断しました」(桑野氏)。

解決へのアプローチ

EAI によるシステム統合

基本方針は決まったが、前述のようにANA のシステムは非常に複雑な状態である。「システムがバラバラなだけならいいのですが、そこにあるデータまでがそれぞれに最適化するために書き換えられてしまっています。そのため、なにかが1 つ変わると、1 つ1 つ多くのEAI によるシステム統合システムを個別に書き換えなければならない状況に陥っていました」(桑野氏)。

ANA のオペレーション業務を可能にする情報

▲ ANA のオペレーション業務を可能にする情報


そこで、氏川氏と桑野氏は、まずはデータベースの統合により解決を図ることに決める。データベース全体をシンプルな構成にまとめなおし、将来的にシームレスな利用方式を可能にしようという考えだ。データベースの整合性を保ち、必要なシステム間インタフェースを効率化するために、EAI の採用がテーマになった。


EAI (Enterprise Application Integration)とは、各種の情報システムやアプリケーションを、有機的に結び、それまでバラバラに築かれた情報システム資源を、一つにまとめあげてくれるソリューションである。低コスト・短時間での統合が可能で、業務統合やデータ統合、開発・運用コストの削減、ホスト連携、BtoB 連携、Web 連携などに活用されている。
ANA では、このEAI を使って、データベースの統合と将来的な開発・運用コストの削減を狙おうというわけである。

NTTソフトウェアという選択。 ポイントは「使う側に立つ」

仕事柄、両氏ともEAI の知識は得ていたが、この時点ではまだEAI の採用事例は決して多くなかった。そこで、さまざまなベンダーにアプローチし、情報を収集した。


NTTソフトウェアのチームリーダーである小泉は、ANA からの要請を次のように捉えたという。


「企業内のシステムやデータというのは、本来はひとつに集約されているべきものですが、業務の都合などでバラバラになってしまっているというのが多くの企業の実情です。そのバラバラのシステムをひとつのシステムと捉えて統合するのが私たちの役割なのですが、ANA のように28 個ものシステムがあると、それは容易ではありません。EAI パッケージを導入すればいい、という考え方では絶対に成功しません。


そのため、私たちはコンサルティングによって、一見バラバラに見えるデータやシステムを整理し、その共通項を探し、それを中心にして全体をアーキテクトすることからはじめます。このコンサルティング力が私たちNTTソフトウェアの強みで、それはシステム統合の豊富な経験に基づいています。ヒアリングをさせていただいた結果、業務と情報の連携を徹底的に見直し、最適な連携ルートの確立を目指しました。ユーザーの使い勝手を考えた上で、システム全体のグランドデザインを作り直すことからご提案したわけです」。

システム改善の課題

▲ システム改善の課題

こうした姿勢は、ANA の考え方に一致した。氏川氏、桑野氏はその経緯を口をそろえてこう語る。

「ほとんどのベンダーの方はEAI に信頼や実績がない段階だったためか、EAIというツールが先にありきの提案でした。でも、私たちが求めたのはこちらの気持ちを受けとめて、最善の方向性を示してくれるベンダーです。その点、NTTソフトウェアは、使う側の立場にたってANA の業務課題を導き出し、それを元にシステム統合の方向性を検討しましょう、というアプローチをしてくれたので、非常に受け入れやすかったですね」。

こうして、ANAとNTTソフトウェアによるシステム統合計画は始まったわけである。

小泉 信義氏小泉 信義氏 NTTソフトウェア株式会社 エンタープライズ・ソリューション事業グループ システム統合事業ユニット 事業ユニット長

ソリューションとその成果

コンサルティングから設計・構築へ

システム全体のグランドデザイン作りは、NTTソフトウェアによる綿密なコンサルティングを通して行われた。スタートは2001 年の秋。小泉たちのチームは、氏川氏の「データ連携の心(中心)は飛行機の“便”情報だ」という予測を元に検証を重ね、どのような情報デリバリー経路を作れば、確実で使いやすいデータベースになるのかを検討した。


小泉はその過程を「複数のシステムを1 つと捉えて、1 つのプラットフォーム、1 つのデータでまとめ上げる作業なのですが、さすがに28となると、その整理だけでも大変でした。ただ、やるほどに意欲が湧きましたね」と語り、氏川氏は「いい意味でしつこいほど粘っこく(笑)聞かれましたし、貪欲に努力してくれました」とNTTソフトウェアの仕事振りを評してくれた。


こうして、コンサルティングが2002 年6 月に終了し、いくつものパッケージ候補の中から、NTTソフトウェアの推薦により、最適なEAI パッケージとしてwebMethods が採用された。


翌2003 年4 月には、データベース間の相互連携を可能にする共通基盤システムが完成し、同年10 月には、まず客室乗務員管理システムが完成した。今後は、数年のスパンで飛行計画システム、フライトインフォメーションシステムを順次、共通基盤システムを基軸にリニューアルしていく予定だという。

従来のシステム構成
従来のシステム構成
下矢印
システム改善の課題
現段階におけるデータの統合・共有
はっきり現われはじめた具体的な成果


現時点では計画半ばで、数字的な成果はまだ評価段階にないが、すでに効果がではじめているという。例えば、インターネットで提供している発着案内のパフォーマンスの向上。


「以前はインターネット系システムからもメインフレームのデータベースにアクセスしていたため、複雑なシステム連携をとらざるを得ず、アクセスが集中すると表示に時間がかかっていました。それが今では、スムーズに表示されています」と氏川氏。


また、「客室乗務員の管理システムがオープン系になったことで、帳票ベースの手作業だった乗務スケジュール管理の作業効率が格段に向上しました」桑野氏はこう語る。


そのほか、新客室乗務員システムの完成により、従来は別々の端末で確認しなければならなかった情報を、一台で済ますことができるなど、社内スタッフの業務も効率化が進んでいるとのこと。
「こういった効率化が進むと、スタッフは新たな業務に取り組めます。スタッフの付加価値が上がるわけです。これはお客様へのサービス向上にもつながるでしょう」(氏川氏)。

今後の展開

可用性の向上とコストダウンが実現

今回のシステム統合は、まだ「一山越えた」(桑野氏)だけである。したがって、総合的な評価を下すには時期尚早であろう。しかし、上記の諸成果から判断して、桑野氏は「データ統合の点では、現段階ですでに成功している」という。また、ビジネス環境の変化に即応できるという点で、「業務がパワーアップした」と説明してくれた。


「航空業界では、法律や社内の規定の変化で制度変更が起きますが、その際、重要なのはスピードです。このスピードは、人力だけではどうしようもなく、システムの柔軟性に拠るところが大きいのです。今回のシステム統合は、このスピードを数段速めてくれました」。


「制度変更に関しては」と氏川氏がつづける。「それに伴うシステム上の変更が必ず必要になります。これまではその変更への対応に、多額の出費を余儀なくされていましたが、今後はおそらく、画期的に削減されるのではないでしょうか」。


コストダウンについては、システムインテグレータとして、小泉が最後にこうつけ加えた。「今回のシステム統合では、ANA が自社でメンテナンスできるような基本設計を施しました。この点でも、コストダウンが図れるはずです。また、日進月歩の技術進化で微妙な更新は定期的に必要となりますが、オープン化を実施したことで、新しい技術の取り込みは格段に容易になっています。低コストのマイナーチェンジをつづければ、統合部分をいつまでもサビつかせることなく、長期にわたって使いつづけることができます」。


最後に、今後の見通しについて氏川氏が語ってくれた。「今、コンサルティング時のレポートとほぼ同様の結果が得られています。今後も苦労はあるでしょうが、十分期待できると確信しています」。

Key Technology

ANA のシステム統合を可能にしたebPowerSynergy(R)システム統合の相乗効果に発展の可能性というパワーをプラス!

今回紹介したANA のシステム統合は、NTT ソフトウェアのソリューションメニュー、ebPowerSynergy によって進められた。このebPowerSynergy は、「企業内システム」はもちろん「企業間システム」や「ビジネスプロセス」の統合をも可能にするもので、コンサルティングから設計、構築、保守運用までをカバーしている。「企業内システム」ならEAI技術を、「企業間システム」ならWeb 技術などを用いて、お客様ごとの異なるニーズに応えるのが特徴だ。

ANA のシステム統合を可能にしたebPowerSynergy(R) システム統合の相乗効果に発展の可能性というパワーをプラス!

例えば、ANA のケースでは、高コストで柔軟性の低いデータベースシステムを、低コストで保守運用できるものに変身させ、ビジネスプロセスの効率化も達成した。将来の新規システム導入や追加に際しては、開発・運用コストを大幅に削減できるよう、柔軟性と拡張性をもあわせ持たせている。システム統合によるシナジー(相乗)効果を最大限に引き出しながら、発展の可能性というパワーを、既存システムに付加したわけだ。


このようなebPowerSynergy 導入効果は、NTTソフトウェアのヒューマンリソースに支えられていることもつけ加えておこう。コンサルティングフェーズでは、特定のツールに限定されることなく、お客様のニーズにとって、最適なシステムのグランドデザインを描けること。予算・規模・期間に合わせた、正確な見積りをだせること。お客様のスタッフ配置やスキルを前提に、立ち上げやすく、しかも運用の確実なテクノロジーを選択するなど、プロジェクトの実現性を最優先すること。こういったことが可能なのは、多年の技術的な蓄積はもとより、お客様の課題をお客様以上に掘り下げることのできる、多くの専門スタッフとその強力な組織力によるものである。


これらは、NTTソフトウェアが提供するソリューションのキーともいえる、無形のヒューマンツールである。

お客様プロフィール

 お客様プロフィール
設立 1952年(昭和27年)
事業概要 定期航空運送事業・不定期航空運送事業・航空機使用事業・その他附帯事業
資本金 876億6,729万円(2004年3月現在)
従業員数 12,277名(2004年3月現在)
URL http://www.ana.co.jp/
全日空システム企画株式会社 様
●●株式会社様 お客様プロフィール
設立 1986年(昭和61年)
事業概要 コンサルティング、システムインテグレーションサービス、受託ソフトウェア開発、ASP(アプリケーション・サービス・プロバイダ)、情報システム運用管理保守、ソフトウェアプロダクト仕入販売
資本金 5,250万円(2003年11月現在)
従業員数 573名(2004年6月現在)
URL http://www.asp-kk.co.jp/

※2012年1月現在