概要

ICT技術を活用して国内外の機関投資家の議決権行使環境を効率化する「機関投資家向け議決権電子行使プラットフォーム」を運営するICJ。このプラットフォームの利便性をさらに高めるため、株主総会の招集通知などの情報を一覧できるサイト「Arrow Force」を2010年5月よりスタートさせた。サービス導入の決定から実際のリリースまではわずか半年。短期間での開発を成功に導いたのは、「SkyOnDemand」によるクラウド連携だった。

課題

議決権行使の環境を、より便利に

株式市場では企業の株式持ち合い解消が進み、一方で国内外の機関投資家のシェアが拡大している。また近年、議決権行使を積極的に行う機関投資家が増えている。しかし従来、その方法は紙ベースに限られ、効率的とは言い難かった。例えば日本国内なら、総会開催の約3週間前に機関投資家のもとに招集通知などの資料が届き、そこから締切日まで実質的に3~5日間で、膨大な紙の資料を精査して議案を検討しなければならない。ピーク時には一度に1000通以上の招集通知が届くこともあり、事務負担は膨大だ。海外機関投資家の場合、情報伝達にさらに多くの日数を要する。


このような背景のもと、ICT技術で議決権行使環境を効率化する目的で、東京証券取引所、日本証券業協会、米国Broadridge社が合弁でICJを設立。「機関投資家向け議決権電子行使プラットフォーム」を構築し、2005年12月期決算会社からサービスを開始した。さらに2009年、このプラットフォームの利便性を高めるため、招集通知の入手や保有銘柄の一元管理が可能な招集通知一覧サイトを、総会シーズン前の翌年5月までにオープンすることが決定された。ICJのITマネージメント部長、糀畑公博氏は言う。


証券取引所から提供されるデータを管理し、機関投資家へ情報公開するというシステムを、約半年で構築しなければなりません。とにかく時間がないプロジェクトでした

解決へのアプローチ

開発スピードを重視し、クラウドに決定

そこでICJでは、ユーザーが閲覧するサイトの部分を、スピードとコストを重視し、クラウド(SaaS)サービスの「Salesforce」をベースに開発することに決定。しかし、それだけでは問題は解決しなかった。今回の招集通知一覧サイトは、ICJの提供する議決権電子行使プラットフォームの参加・非参加にかかわらず、国内全取引所・全上場企業を対象にする計画だ。また、ユーザーがサイト上で保有銘柄を管理できるポートフォリオ機能や、総会日・掲載日等による期間指定検索、登録銘柄の新着情報のメール配信など、多様な機能を持たせることを目的とした。そうした要件を満たすには、Salesforceの機能だけでは対応できなかった。


Salesforceは情報を公開するシステムとしては優れていても、複雑なデータ集計・連携部分で柔軟なアクションを行うのには向いていません でした」(糀畑氏)


そこで浮上したのが、Salesforceと既存のシステムをつなぐクラウド型データ連携サービス「SkyOnDemand」だ。

「議決権電子行使プラットフォーム」で利便性が向上

ソリューションとその成果

クラウドとデータ提供元との接続が問題に

データ提供元とSalesforceをSkyOnDemandでつなげば、複雑な処理を行うことができる。例えば、データ提供元にある招集通知PDFファイルのうち新着だけを選んでサイトに表示する、指定した時間おきにデータ提供元から情報を取得するなど。こうした処理を行うツールは他にもあったが、サーバー構築が必要なパッケージソフトに限られていた。


さらに、このシステムで扱う招集通知などの情報は極めて秘匿度が高く、堅牢なセキュリティ環境が求められ、データ提供元への接続にも制約が多い。SkyOnDemandの場合、高品質・高セキュリティの「SkyOnDemand over VPN」を利用することで、データ提供元への安全なアクセスを実現できる。こうした理由から、「SkyOnDemand以外に選択肢はなかった」と糀畑氏は振り返る。


とはいえ、不安要素もありました。Salesforceは実績はありますが、今回はカスタム開発した部分も多く、処理が集中しても性能が落ちないか、障害が起こった時に迅速に復旧できるか、SkyOnDemandとの連携はスムーズに行えるかといった懸念がありました。ところが、実際に出来上がったシステムでテストをしてみると、ほとんどバグがないのに驚きました。負荷テストを繰り返し、数値的な条件を念入りに検証することで、確信を得られました」(糀畑氏)


そして2010年5月17日、スケジュールに遅れることなく招集通知サイト「Arrow Force」をカットオーバー。総会シーズンを前に大量の情報が集積し、すぐに多くの機関投資家が活用をはじめた。

SkyOnDemand導入イメージ

今後の展開

クラウド時代のシステム開発は「連携」がカギ

サービス開始から数カ月、ユーザーのArrow Forceに対する評価は非常に高いという。これまで不十分だった、議決権行使業務の「往路」の情報を一元管理することが可能になり、プラットフォーム全体の使い勝手が大幅に向上したためだ。


糀畑氏が今回のプロジェクトを振り返り、何よりも印象的だったのが、NTTソフトウェアの対応の良さだった。


NTTソフトウェアの担当者は、担当ベンダーから渡される難解なドキュメントを的確に理解し、スピーディーに複雑な連携プログラムを構築してくれました。運用面でも、朝が早い金融機関の慣習に合わせて特別なサポートを引き受けてもらいました」また糀畑氏は、今回クラウドを利用したサービス立ち上げに携わり、システム開発に対する思いも新たにしたという。


システム開発のコストとスピード、環境変化への柔軟な対応を考えると、これからますますクラウドという選択肢は増えていくことでしょう。ただ、クラウドにも得手不得手があることがわかりました。得意分野を持つクラウド同士を組み合わせることが、今後のシステム開発におけるポイントになると思います

Arrow Force プロジェクトメンバー

お客様プロフィール

 お客様プロフィール
設立 2004年7月
事業概要 東京証券取引所、日本証券業協会、米国Broadridge社が出資して設立。「機関投資家向け議決権電子行使プラットフォーム」の運営を行っている。
資本金 4億円
従業員数 17名( 2010年9月30日 現在)
URL http://www.icj-co.com/

※2010年9月現在