概要

関東甲信越を中心に、運輸事業や駅ビル・駅スペース活用事業、ショッピング・オフィス事業など幅広く手掛けている東日本旅客鉄道株式会社。ICTを活用した顧客サービスの一環として開発した公式アプリ「JR東日本アプリ」は、使いやすさやサービスの充実度を高く評価されている。NTTソフトウェアは、アプリや列車から取得できるデータを分析・見える化するビジネスインテリジェンス(BI)基盤の構築、BIツール運用支援から分析視点の提案までトータルに対応し、新たなサービスやコンテンツの開発に貢献している。

課題

アジャイル的な手法で開発された公式アプリでサービスやコンテンツをスピーディに展開

 2014年3月に公開した「JR東日本アプリ」は、列車運行情報、リアルタイム列車位置情報、駅構内の設備やホーム案内など列車や駅を利用するときに役立つ情報をすぐにわかりやすく見ることができ、さらにスキマ時間に楽しめるコンテンツも提供している。2016年3月の時点でダウンロード数は160万以上となり、多くのユーザーが利用する定番アプリの1つとなっている。

 掲載するコンテンツの更新頻度が非常に早く、またアプリ自身も機能やサービスの追加に伴うアップデートを頻繁に行うことからアジャイル的な開発手法を取り入れており、NTTソフトウェアは初期の段階から柔軟な体制と発想で同アプリの開発における中心的な役割を担っている。

 「こうした積極的かつスピーディなサービスやコンテンツの開発、ご提供は、多くのお客様が持たれている当社のイメージとは少し異なるかもしれませんね」と、サービス品質改革部 ICT 情報発信プロジェクトチームの松本貴之氏は笑う。

 
「社内ではいろいろなアイデアが出ており、それをどのようにアプリに反映すれば、お客様により魅力的に、また役立つサービスとしてご提供できるかを常に考えています。従来型のシステム開発のスタイルではタイムリーな展開は難しく、できることはどんどんやっていこうという方針で取り組んでいます。NTTソフトウェアの柔軟な対応力と高い技術力もあって、良質なアプリをご提供できているのではないかと思います」。

解決へのアプローチ

列車からのデータを分析・見える化するBI基盤を構築 その活用過程から生まれた
「山手線混雑統計情報」

 「JR 東日本アプリ」における同社の積極的な姿勢を端的に表しているのが、「実験に参加する」というメニューだ。ここには研究・実証段階の機能や試験的なサービスが先行して組み込まれている。「山手線混雑統計情報」はその1つで、山手線の車両ごとの混み具合を曜日別・時間帯別にわかりやすく見ることができる。各車両に備わる複数のセンサーからのデータは数十秒ごとに送信、蓄積されるため、全体としては非常に膨大な量となる。そのデータをDWH(Actian Vector)に蓄積し、分析・見える化するBI基盤の構築とBIツール「Yellowfin」の運用支援、さらにさまざまな分析視点の提案やアイデアの提供を通して、ユーザーへ提供する新たなサービスの開発を強力にバックアップしているのがNTTソフトウェアだ。

 「車両から取得するデータ、アプリを通して得られるデータをどのように蓄積、管理し、魅力的なサービスの開発や品質向上に役立てていくかは大きな課題でした。もはやExcelで頑張るというレベルではなく、しっかりしたBI基盤を整えて、さまざまな視点や手法に基づいて多面的にデータを分析していくことが重要と考えました。Yellowfinは直感的に使える優れたツールですが、そこにNTTソフトウェアが持つ知見やノウハウ、柔軟なアドバイスが加わることで、我々だけでは思いつかない新しい発見が常にあります」と松本氏は話す。

 「実は山手線混雑統計情報も、NTTソフトウェアと共にBI基盤の構築とデータ分析を進めていく過程で、車両から取得したデータをYellowfinで見える化してみたら面白かった、ということが発端です。重量センサーのデータを基にしたヒートマップ表示の画面を見て、これをお客様にご提供したら意外に役立つのでは? 面白いと思ってもらえるのでは? というところからサービス化につながりました」。



Yellowfinを使って編成(車両)の切り口で見える化

山手線の車両から送られてくる重量センサーのデータを、Yellowfinを使って編成(車両)の切り口で見える化した画面(左)。これが「山手線混雑統計情報」サービスの基になっている(右)

ソリューションとその成果

多様な視点・アドバイスを活かしたデータ分析をアプリの改良や新しいコンテンツの開発につなげる

 「JR東日本アプリ」を通じて提供しているサービスやコンテンツへのアクセス状況、ダウンロード数などのデータも分析の対象となっており、その結果はアプリ内コンテンツの開発にも活かされている。サービス品質改革部 ICT情報発信プロジェクトチームの杉山英充氏は、NTTソフトウェアと共に取り組むことで分析の視点が広がると話す。

 「性別や年齢層、エリアをはじめ、アプリを通して得られるデータは多様です。それらをYellowfinで見える化し、サービスやコンテンツごとの傾向をその場で把握できるのは大きいですね。実際にアクセスの男女比の違いを踏まえたコンテンツ開発なども行っていますが、NTTソフトウェアは我々とはちょっと違う視点からコメントや知恵を出していただけるので、新たな気付きや発想につながることが多いです」。

 また、アプリの利用状況と、社内の他の業務(部門)の状況を掛け合わせることで得られる発見もあったという。

 「一例として、事故や災害などが起きたときのお客様からのお問い合わせの傾向にも変化が生じています。アプリ経由で詳細な情報を得られる路線の場合はお客様が自己解決されることが多いようです。アプリのアクセス数が大きく伸びる一方、お客様センターへの問い合わせが減る傾向が見られました。一方、まだアプリで十分な情報が提供できていない路線、例えば新幹線に関することだと、これまでと同様にお問い合わせそのものが大きく増えます。アプリの利用状況と周辺の統計データと組み合わせると、さらにわかることが広がるケースと捉えています」。

今後の展開

これからもBI基盤の活用とデータの見える化を通して 「JR東日本アプリ」をさらなる成功へ導く

「JR東日本アプリ」は着実に機能アップを続け、鉄道運行情報を素早くチェックできる「My路線設定」に首都圏の私鉄各社(15社局51路線)の追加が可能になっているほか、「列車位置情報」の対象路線も合計17路線まで拡充されている(2016年3月時点)。

 同社では駅を降りた後のバスやタクシーなど交通機関の情報提供や駅構内のデジタルサイネージとの情報連携の実証実験など、アプリと連携したよりきめ細かなサービス提供への取り組みも行っている。また、英語版アプリ「JR-EAST Train Info」でも列車位置情報を見られるようになり、Apple Watch版アプリの提供も始まった。より多くの利用者に役立つツールとして「JR東日本アプリ」は進化を続け、取得できるデータも今後さらに増えていくことになる。

「ますます蓄積されていく膨大なデータをいかに有効に活用して、お客様への良質なサービスに反映させていくか、これからも試行錯誤は続いていくと思います。構築したBI基盤やYellowfinをまだ十分に使いこなせているわけではありませんが、NTTソフトウェアに支援をいただきながら、さまざまなことにチャレンジしていきたいですね」と松本氏は話してくれた。

リアルタイムにマッピングした図

Yellowfinでは、山手線の各編成が現在どこを走っているか、また混雑状況などをリアルタイムにマッピングすることも可能。こうした実験的な取り組みが新たなサービス開発につながっていく

お客様プロフィール

設立 1987年4月1日
主な事業内容

旅客鉄道事業、貨物鉄道事業、旅客自動車運送事業、旅行業、電気通信事業、
小売業、旅館業および飲食店業、不動産売買・賃貸・仲介・管理業 など

資本金 2,000億円
社員数 58,550人
URL http://www.jreast.co.jp
2015年4月1日現在