幅広い可能性もたらすビジネスチャット。新たなコミュニケーションツールで業務に変革を


テキストチャットはリアルタイムで簡潔に用件を伝えられる利点があり、個人の生活の中でメールに代わる新しいコミュニケーション手段として定着してきました。この利点をビジネスでも活用していこうと、チャットシステムを導入する企業が増えています。チャットは使い方次第で単に業務連絡の一端を担うだけに限らず、ビジネスシーンの中で社内外の業務のあり方そのものを変革する潜在能力を秘めています。チャットが持つ新しいビジネス活用の事例を中心に、導入の注意点と合わせて紹介します。


企業の関心高まるチャットの業務活用

スマートフォンの普及ともあいまって、テキストチャットを利用する人が増えています。国内最大手の無料メッセージサービス運営会社の発表によれば、サービスの国内利用者数は2015年時点で5800万人を超えているとのことです。 個人でチャットを利用する主な用途としては、家族や友人と気軽なメッセージ交換が挙げられます。電話でおしゃべりするような感覚で気軽にメッセージを送り合える手軽さに、手放せないコミュニケーションツールとなっている人も多いのではないでしょうか。 こうした手軽にメッセージをやり取りのできる利便性を社内業務でも取り入れようと、企業もチャットに関心を持ち始めています。すでに業務用としてチャットシステムを導入している企業もあり、ビジネスに役立てる取り組みも始まっています。


メールよりも簡潔で迅速な業務連絡を実現

チャットを業務に取り入れようとするとき、最初に思い浮かぶのは社内連絡への活用でしょう。社内でメールを使って業務連絡をするとき、次のような不便さを感じたことはないでしょうか。


・件名をつけたり、宛名やあいさつを書いたりするなど、用件を伝えるのに手間がかかる
・メールを送ってもすぐに返答が来るとは限らず、簡単な用件でも解決までに時間を要する場合がある


連絡をチャットで行うと、短文でメッセージを送り合うことができるため、手際よく用件を済ませられます。この利便性を活かせるのが上司と部下の間で行う進捗状況の報告です。たとえば、取引先との案件について「イエス」、「ノー」で済む用件でも、メールでは本文を作成するのに時間がかかっていました。チャットによるやりとりでは、上司は質問を送るだけでよく、部下も返答のメッセージを送り返えせばよいため、簡潔な業務連絡を実現できます。スマートフォンでもメールのやりとりはできますが、アドレス帳から相手の送り先を指定して画面のタッチによる入力で長めの本文を書くといった繁雑さがあり、チャットの利便性にはかないません。

グループ単位での活用にチャットは真価を発揮

チャットでは、一対一だけでなくグループを作り、複数の人でのやり取りすることも可能です。このグループチャットこそが、業務で有意義な活用ができるのです。グループチャットは、次のような利便性があります。


・メッセージを書き込むだけで登録されている人全員に伝えられるため、メールで連絡する際に起こりがちな宛先の漏れや誤送信がない。
・返信をひとまとめに表示できるため、質問や確認の回答を把握しやすい。
・チャットの内容は常に保存され検索が可能。そのため、いつでも過去の内容を参照できる。


これらの利点を活用していくと、グループチャットは単なる連絡手段だけでなく、議論や情報交換といった社内コミュニケーションを促進するための有効なツールとなります。社内業務での活用例としては次のものが挙げられます。

部署内での一斉連絡や意思疎通の確認
グループチャットの典型的な活用が、一斉業務連絡です。グループチャットは一方的な通達だけでなく、双方向的な打ち合わせにも活用できます。たとえば、ミーティングの日程調整をグループチャット内で呼びかけて全員に返信を求め、その返信を集約して表示することもできるので、返答のない人への問い合わせも容易になります。

プロジェクトでの共同作業
複数のメンバーによる共同でのソフトウェア開発や資料作成などではグループチャットの活用で生産性の向上が図れます。こうした共同作業では頻繁に質問や提案をすることが多く、返答が来ないために作業が先に進まないときがあります。チャットでは、質問をすれば比較的短時間で返答がもらえるので、効率的な作業進行が可能です。リアルタイムで参加できなかった人も、チャットの履歴を追えば、議論の経緯等も簡単に把握することができます。

ミニ会議のような意見交換の場
部署内での簡易ミーティングをできる場としてグループチャットを活用する方法もあります。テーマを決めての意見交換や、ミーティング前に議案を募集すれば、気軽に情報を寄せ合うことができます。グループチャットに寄せられた情報はさかのぼって閲覧できるので、業務上のアイデアを蓄積したデータベースとしての利用もできます。

緊急時の対応や介護の現場で活躍

企業のイメージ

チャットはオフィス内での業務だけでなく、オフィス外の業務でも活用できます。しかも、使い方次第では業務のあり方そのものを変革し、従来よりも短時間で業務の達成を実現することも可能となります。代表的な事例を紹介しましょう。

ビル管理業務における災害時の被災状況の把握
ある建設会社では、震災などの災害時に被災したビルの状況把握のためにグループチャットを活用しています。以前は、運営するビルが自然災害に見舞われたとき担当者一人一人に通話やメールで連絡して現地の状況を確認しており、は約20ヵ所の施設の状況を把握するのには半日もかかっていました。グループチャットで担当者からの状況報告を共有するようにしたところ、2時間半で状況の把握ができるようになったとのことです。緊急性の高い連絡業務に、グループチャット活用は迅速な状況の把握に役立つと言えます。

介護業務の情報の引継ぎ情報の共有化
ある介護サービス事業者は、日々の業務引継ぎに際して一旦前任の担当者から責任者が伝達事項を受け取り、それを後任の担当者に伝えるというやり方をとっていました。しかし、このような人を介した伝達方法では連絡ミスなど連携が悪いという問題がありました。そこで、グループチャットを導入して前任者からの連絡事項を書き込むようにしたことで、責任者を介さずに後任者に情報を確実に伝えられるようになり、業務の効率化も実現しました。しかも、チャット上の情報はいつでも閲覧できるので、伝言内容の再確認が容易にできるようにもなったとのことです。介護現場では担当者間の情報伝達が重要であり、グループチャットが品質の高い業務遂行に役立っています。

チャットシステムの導入は企業向けを

業務にチャットシステムを活用する際には、社内のパソコンだけでなく外出先からスマートフォンやタブレットでも使用するでしょう。業務でのチャットの場合、内容が外部に漏れないようにしておかなければなりません。そのためには、ユーザ認証やチャットの履歴がスマートフォン等に保存されないなどのセキュリティ機能が必要です。企業向けのチャットシステムにはこうしたビジネス利用のための機能が備わっているため、安心して業務に活用できます。 一方、従業員も業務でチャットを活用するときはツールを公私で使い分けたい傾向があります。

モバイルインターネット市場を調査・研究する機関が2014年に行った調査では、個人向けの無料メッセージサービスを利用している人のおよそ4割近くは、仕事仲間や取引先の人と連絡を取るのに日頃私的に使っている無料メッセージサービスは使いたくないと回答しています。この回答結果から鑑みても、業務で利用するチャットシステムは企業側で専用のシステムを用意する方が望ましいでしょう。 チャットの業務への活用は従業員間の情報交換を迅速かつ容易にするだけでなく、グループ単位での新たなスタイルのコミュニケーションを実現してくれます。企業向けのチャットシステムを導入して、自社に適した活用方法を模索することで、さまざまな業務の効率化と変革につなげてみてはいかがでしょう。

参考文献

ビジネスパーソンのコミュニケーションツールに関する調査(MMD研究所, 2014年3月)